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2012.10.23
[イベントレポート]
10/21(日)アジアの風『人類滅亡報告書』:Q&A

10/21(日)、アジアの風-中東パノラマ出品作品『人類滅亡報告書』の上映後、イム・ピルソン監督のQ&Aが行われました。
Doomsday Book

©2012 TIFF

 
まずは簡単にご挨拶をお願いします。
 
イム・ピルソン監督(以下、イム監督):コンバンハ。実は上映が始まる前にあいさつができればと思っていました。(真ん中の)第2話のテンポが少し遅く、またシリアスなものなので、「最後まで観れば楽しんでもらえますよ」とお伝えしたかったのです。この作品は色々な国で上映をされたのですが、特に同じアジアにある日本での反応が気になっていました。今までの上映のなかでは、1番笑いが少なかった気がします(笑)。みなさんシリアスに観てくださったようですね。
 
この作品は3話から構成されており、第1話「素晴らしい新世界」をイム・ピルソン監督、第2話「天上の被造物」をキム・ジウン監督、第3話の「ハッピー・バースデイ」に関してはイム監督が1人で撮ったという説とキム監督と撮ったという説がありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
 
イム監督:第3話「ハッピーバースデー」のニュースのシーンでは、キム監督に演技指導を担当してもらいました。というわけで、キム監督を「スペシャル・ゲスト・ディレクター」として名前を入れようとしたのですが、キム監督自身が遠慮すると仰いました。キム監督と一緒に撮れたということで、この作品はとても意味のあるものになりました。
 
3つの話全てがとても好きでした。第2話はロボットが悟りをひらくというシリアスな話でしたが、他の2つの話とのトーンの統一は考えなかったのですか?また、ロボットをCGで表現しなかった理由を教えてください。
 
イム監督:キム・ジウン監督は現在アーノルド・シュワルツェネッガーの作品を撮っているので来日できなかったのですが、僕が事前にいくつか予想される質問を聞いてきました。
 今回の2作目はロボットが仏の道に入って哲学的な中身を得るという内容でしたよね。なので、できるだけ最大限CGは排除して、アナログ的な表現をしたいという意図があったそうです。実は一部CGも使われているのですが、近年は韓国でもCGの技術が発展しているので、CGだとわからなかったのではないかと思います。
 3つの話の統一についてなのですが、キム・ギウン監督と私がそれぞれ1話ずつ自由に撮り、3話目をエピローグとして2人で作ろうという話でした。なので、話ごとにトーンの違いはありますが、3つの話を通して共通するものがあるという感じです。
 
素晴らしくSF精神に溢れた作品で、大好きでした。ありがとうございます。第3話の「ハッピーバースデー」について2つ質問があります。私はビリヤードに詳しくないのですが、作中のビリヤードの8番のボールには何か意味があるのか?また、作中に登場する宇宙人が日本のアニメ「銀河鉄道999」の車掌さんに似ていたのですが、あれはオマージュなのでしょうか?

 
イム監督:アリガトウ!私が客席にサクラを仕込んだのかというくらい、私が話したかったことをズバリと質問してくださいました。
 まずビリヤードについてなのですが、私もあまり詳しくはありません。そこで、作家と相談し、どのような内容にしたら荒唐無稽さと悲しみを共生させられるか考えました。そこでビリヤードのボールがモチーフに挙がってきました。ビリヤードのボールは星にも見えますし、数字の8は無限大を表す「∞」にも似ています。それからビリヤードのあるゲームでは「8」が重要な数字であるとも聞きました。それをモチーフとして利用することで、イメージを膨らませて、奇怪なコメディにできないかと考えました。
 宇宙人に関しては、どのような姿で登場させるかとても悩みました。最初はKARAのク・ハラさんに出演してもらおうかとか、3Dで何か創ろうかという考えもあったのですが、SFの作品が少ないアジアで、その源流になっているのは日本のアニメや漫画だと思いました。
そこで、まさにご質問いただいたように、銀河鉄道999の車掌さんをオマージュとして入れました。東京国際映画祭に来て、質問が出たらぜひ答えたいと思っていた質問でした。
Doomsday Book

©2012 TIFF

 
第1話の映画にはエデンの園のリンゴという聖書の引用があり、第2話には仏教の引用がありました。そこにメッセージや意図は込められているのでしょうか。

イム監督:第1話の映画に関してリンゴは、この映画を一般のお客さんが身近に感じられる比喩・例えとして合っているかなと思いました。今回は撮影にも時間がかかり、「もしかしてこの映画の中にはエデンの園のリンゴの意味が含まれているのですか」と聞かれたこともあるのですが、私は人類に何か大きなことがあるとしたら、その始まりはとても小さなこと些細なことではないかと思います。核爆弾ですとか大虐殺とかそういうことではなく、誰か1人の小さなミスとかちょっと誠意がない部分から始まってしまった小さなことが発端となって、人類に大きな影響を及ぼすのではないかなと考え第1話を撮りました。
 キム・ジウン監督によると第2話では、アジア的なSF映画とは何かと悩んだ末に、アジアで共通に信じられている宗教の一つである仏教を取り入れたと言っていました。
 
韓国ではショート・ショート(短編小説よりも短い小説のこと)をベースにした作品が注目を浴び始めているのでしょうか。以前は星新一さんのショート・ショートなどが日本では親しまれていましたが、最近ではあまりこういうタイプのSFのオムニバスは見る機会が少ないように思います。
 
イム監督:日本ではSF小説やアニメーションなど、SF文化は活発だと思っていたのですが、そのような少し残念な状況があるのだと初めて知りました。今回の映画は、出資を募ったりしているうちに、製作にたどりつくまでに6年程かかってしまいました。この作品は今年韓国で劇場公開されたのですが、一部の記者の方たちには「荒唐無稽すぎるのではないか」と言われもしました。しかし、様々な良い映画祭に行くことができ、先ごろもカナダのファンタジア国際映画祭で最高賞もいただくことができました。ただ、お客さんからのリアクションというのは、少し残念なところがありましたね。あまり盛んなリアクションはありませんでした。でも、私とキム監督は、映画監督の想像力を働かせて映画的にいい作品をとるために努力すべきだという風に思っていました。もし私たちの映画が受け入れられなければ、移住しなければならないなと思っています(笑)。次に準備している作品は、商業的な作品になるように今準備しているところです。
 そして、日本の『MEMORIES』(大友克洋監修のアニメーション映画)というSFのアニメーションが、私もキム監督も大好きなのです。この映画の企画を最初に立ち上げたときに『MEMORIES』のような内容を実写で作ったらどうだろうか、とスタートした部分もあるので、この映画はアジア的なSFを追求した映画ともいえます。
 
今回、なぜキム・ジウン監督と一緒に作品を作ろうと思ったのでしょうか。また他の監督で声をかけた方はいるのでしょうか。
 
イム監督:キム・ジウン監督との縁は十数年前に遡ります。私が『南極日誌』を準備しているときに、同じ映画制作会社でキム・ジウン監督は『反則王』を撮っていました。そのとき私はまだ準備段階で、長編デビューの前だったのですが、その頃からキム・ジウン監督は私の面倒をよく見てくれましたし、友情も培ってきました。そういうふうに私のことを非常に大事にしてくれましたので、友情の結果として一緒に撮ることができて、気分を良くしています。
 オムニバス映画は、許されることならばもっともっとたくさん撮りたいと思っています。実はこの会場に『建築学概論』という作品を撮ったイ・ヨンジュ監督さんが来ていらっしゃるのですが、私の作品よりも40倍ぐらい沢山のお客さんを動員したまさに商業監督です。そういった素晴らしい監督と力を合わせて撮りたいと思います。明るくて皆さんに気に入っていただけるような映画を撮れたらありがたいですね。

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