コンペティション 『アクセッション ― 増殖』 記者会見のご報告
日時・場所:
10/23(火) 16:30~ @TIFF movie café
登壇者:
マイケル・J・リックス(監督/製作/脚本/撮影/編集)
東京国際映画祭には初日から参加してくださっているリックス監督には、まず東京の印象について伺いました。
マイケル・J・リックス監督(以下、監督): コンペティションに参加する機会をくださってありがとうございます。とても素晴らしい時間を過ごしています。東京を見て回る時間はあまりないのですが、かわりに毎日たくさんの、特にコンペティション部門の映画を見ています。素晴らしい作品ばかりですね。
Q: 今年のコンペティションでは、監督の個性が際立っている作品が集められていますが、この作品は最も極端な激しいかたちの作品です。このテーマを描こうと思ったきっかけは?
監督: この映画が私のパーソナリティだと思われないことを願いますよ!南アフリカでは日常的な問題であるにも関わらず、今までにこのことをテーマにした映画は作られていません。母国では、たまに新聞記事になるものの、どちらかと言えば誰もが見て見ぬふりをする傾向にあり対処が遅れています。ですからこのテーマを取り上げるべきだと感じました。
Q: 舞台となっているのは?
監督: 描かれている場所と似たようなコミュニティで撮影しました。コミュニティ内でも、例えば、同じような体験をした人を知っているだとか、あるいはそういった話を聞いたことがあるかなどについて、事前に調査やインタビューを実施しました。できるだけ、リアルにあまり脚色せずに描きたいと考えたからです。
Q: 最後まで緊張感の続くすごい映画でした。途中で夜のシーンが1回あるだけで、あとはずっと昼間のシーンばかりでしたね?
監督: 実際は何日か経っているのですが、日の出から陽が落ちるまでの1日の出来事を描きたかったのです。もちろん、あの夜のシーンが必要だったので、その構成は崩れてしまったわけですが、とにかく1日の始まりから終わりまでの物語にするという考えた方でつくりました。
Q: 映画の色に特徴があると感じました。カラフルなガチョウに始まり、後半に行くに従って徐々にモノトーンに近くなっていきます。
監督: 最初から意図したところで、このテクニックで感情面に影響を与えることができるのではないのかを試してみたかったのです。
最初のフレームから最後のフレームへと、ゆっくりと色があせていく。それと同時に見ている側の気持ちが失せてくる、といった効果ですが、上手くいったと思います。
Q: 監督、製作、脚本、撮影、編集と、ご自身で行われていますが、それに関する苦労話など・・・
監督: 何よりも一番の苦労は資金集めでした。予算が少ない分、色々な役割を自分でこなし、結局一人五役となりました。また、現場では、プロの俳優を使ったわけではないのですが、それでも演技力を要する内容でしたので、登場人物になりきれるように、そして台詞についても即興ができるように、何度も時間をかけて役作りのリハーサルをしました。このアマチュアの俳優とは、以前の短編のプロジェクトで知り合い、そこで良かったので声をかけました。
Q: 音楽はウェブで見つけたそうですが?
監督: まず、なるべく音楽は使わないようにしました。ハリウッド映画のような音楽の使い方は避けたかったのです。ただ、エンドクレジットまであまりにも静かなのが気になって、音楽を入れました。音楽を入れるとなると、そこまでの映画のトーンを維持していかなければならないので、できるだけ音楽的ではないものを探しました。ウェブサイトで、無償でライセンスを提供している2曲を見つけることができて、ラッキーでした。
Q: ものすごく近接で撮影されていて、不快にさえ思う距離感だったのですが、これは狙ったテクニックなのでしょうか。
監督: 映画を半分くらい撮り終わってから、このやり方にしようと決めました。テーマとなっている問題を観客たちに突きつけ、とにかくこの人物と無理やりにでも向き合ってもらおう。そういうイメージで、このストーリーを伝える上で最も効果的であると思ったので、この方法を用いました。
コンペティション
『アクセッション ― 増殖』
監督/製作/脚本/撮影/編集:
マイケル・J・リックス
キャスト:
ペトロ・テンバ・ムボレ
ヴズムズィ・ンドゥモ