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2012.10.28
[イベントレポート]
「役を演じていない高良健吾は横道世之介に近い」―10/27(土)特別招待作品『横道世之介』:舞台挨拶

 昨年の東京国際映画祭で、コンペティション部門に出品した『キツツキと雨』が審査員特別賞を受賞した沖田修一監督。今年は最新作の『横道世之介』が特別招待部門で上映、しかもワールドプレミアとあって、沖田監督と主人公の横道世之介を演じた高良健吾さんが駆けつけた舞台挨拶は温かな雰囲気に包まれました。
横道世之介

©2012 TIFF

 
 客席からの「健吾くーん」という黄色い声援に照れくさそうにはにかむ高良さんと、そんな高良さんをニコニコと見守る沖田監督。高良さんが「今日はとても良い日です。『横道世之介』が初めて一般の人に見ていただける日です」と言えば、沖田監督も「僕も今日は良い日だなと思います。天気も良くて良かったです」と、作品そのままのほのぼののんびりとした挨拶で場内を脱力させます。
沖田修一監督

©2012 TIFF

 
 沖田監督は、「原作を読んだ印象は軽やか。映画化を前提に読んでいたので、キャラクターが動くところを見たいと思いました。こうして舞台に立っていたり、役を演じていない普段の高良健吾は世之介に近い。いつか高良くんに主演をしてもらいたかったのですが、今回思う存分できて楽しかったです」と作品を振り返ります。高良さんも「沖田さんの作品で初めて主演ができました。知っているスタッフさんと一緒に素直にできて良かったです」と4回目の沖田作品での主演を喜びます。
 
 このおふたり、一方が話している間中、ニコニコニヤニヤと相手を見つめている様子が印象的。ときおりマイクをオフにしてコソコソと話していたりと、兄弟のような親密な距離感が伝わってきました。
 
 高良さんは、普通なのに愛すべき世之介というキャラクターについて意識したポイントは? という質問に「逆に意識せずにやりました」と答えます。「脚本を読んで『面白いなー、いいシーンだなー』と思うシーンでは、世之介が狙って芝居をしたり欲が出たりすると嫌らしくなるので、狙わないことを意識しました」。
高良健吾

©2012 TIFF

 
 沖田監督にとって初めてのラブストーリーでもある本作。世之介と「おつきあい」をするお嬢様の祥子を演じる吉高由里子さんについて、沖田監督は「爆発力がある。吉高さんの芝居を見ながら(すげーな…)とつぶやいてました(笑)」、高良さんは「一度、吉高さんと次のシーンについて打ち合わせみたいなことをしたんです。そしたらやってるうちになんか恥ずかしくなっちゃって。予期せぬことが起こるから楽しいんですよね。吉高さんじゃないとできないテンションとか間だと思います」と、白旗を掲げます。『蛇にピアス』以来の共演となる高良さんは、「吉高さんと、『蛇にピアス』のときは暗かったね、今回は明るくやれたねって話しました(笑)」と、5年間での成長を感じたようです。「『蛇にピアス』とは内容が全然違うと思うんで……」と笑う沖田監督に、観客も(たしかに!)と頷きます。
 
 1987年が舞台の本作について、「2012年を生きていてもそれを意識していないじゃないですか。だから、演じるときは意識しませんでした」(高良)、「大学生が上京した一年目のお話。いつの時代でもあることなので、『1987年ですけど何か?』という感じでやりました(笑)」(沖田)と、二人とも飄々とマイペース。
 
 「二十歳で沖田監督と出会いました。現場はつらいものというイメージがあったんですけど、沖田組は生き生きとしていられる。このタイミングで『横道世之介』のような素敵な原作で、今までしたことがない役で、沖田監督の作品で主演できたことが自分にとってデカかった。また沖田監督とやりたいです。そして、みなさんにはこの作品を自由に持ち帰っていただければ嬉しいです」と、作品と沖田監督への愛情を率直に語る高良さんの言葉で舞台挨拶の幕が閉じました。
 
取材・文:須永貴子

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