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2012.10.11
[インタビュー]
邦画ファン、映画製作関係者必見!!スペシャル企画~東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門 座談会 (前編)

スペシャル企画~東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門 座談会 (前編)
 
邦画ファン、映画製作関係者必見!!
 
映画館(こや)の番組編成プロたちが、今のインディペンデント映画界を語る。
そして、本年度「日本映画・ある視点」の見どころも満載! 激論白熱!?
 

北條誠人(ユーロスペース支配人・[中央])×家田祐明(K’s cinema番組編成・[右])×沢村敏(東京テアトル株式会社 映像事業部 興行部番組編成・[左])
「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

 
司会:矢田部吉彦(TIFFプログラミング・ディレクター)
 
 
インディペンデント映画は、今、黄金期を迎えているか?
 
矢田部:「日本映画・ある視点」部門では、これまでは監督たちを集めた座談会を開いてきましたが、今年は違った視点でこの部門の作品、つまりインディペンデント映画について語って頂いたらどうだろうかと考えました。また、この部門の作品がビジネスに繋がって欲しいという思いも込め、劇場の番組編成を担当している皆さんに集まって頂いた次第です。個人的には、ここ1〜2年インディペンデント映画が面白くなってきたという感触があるので、積極的に上映している劇場サイドが今の状況をどう見ているのか、伺いたいとも思いました。
この部門は実は数年前から、より日本のインディペンデント映画に路線変更していて、舵を切った初年の作品賞が、松江哲明監督の『ライブテープ』だったのです。2年目には深田晃司監督『歓待』、昨年は小林啓一監督『ももいろそらを』が受賞して、面白い展開になってきました。
3年やったことで色は出てきてはいますが、今度は、例えば直前のPFF、直後の東京フィルメックス、少し待つと、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭があり、それらとあまり区別がつかなくなってしまった。TIFFの「日本映画・ある視点」は、どこを目指すのかという時期に改めて差しかかっている段階です。
まずは、今の日本のインディペンデント映画を、皆さんどうご覧になっているかお話を伺いたいと思います。
今年、『踊る大捜査線』シリーズがファイナルを迎えたことは、日本映画のひとつの時代の区切りと考えていいんじゃないか、と。2000年代からの邦画の大きな流れとして、大ヒット映画とインディペンデント映画の二極化という傾向がありますが、ここ10数年の邦画の流れを皆さんはどんなふうにご覧になっていましたか。
 
沢村敏(以下、沢村):日本映画の切り口だけで考えたら、多分、2000年の前半くらいから右肩上がりのはずなのです。東宝の売上げとちょうど比例するはずなので。
興行収入も2年ぐらい前に2千何百億円でしたか、出ていましたよね。そういう意味では、日本映画の厳しかった1900年代中盤から一気に駆け上ってきた感じがある。でも、これは全体としての話であって、インディペンデント系とか単館系に関しては、表に出ない数字として落ちているのではないかということを感じています。全体的に上がっていても、単館の市場で見た場合、けして上がっているとは言いがたいですね。
「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

 
家田祐明(以下、家田):実際、その10年間ということで言えば、中野武蔵野ホールで積極的に自主映画を取り上げていたのが、10年前頃に終わりを迎えた。なんで終わったのかと言えば、観客が入らなかったからで、中野には自主映画の登竜門的な役割がありましたが、中野が果たしていた自主映画の牙城としての役割は終わった感じでした。その頃、シネ・アミューズなどの渋谷勢が、インディペンデントの新しい作品を積極的にやっていた時期だったので、どんどん作品がそちらに流れていった。
インディペンデントとメジャーの二極化もわかるのですが、自主映画というよりは、今はメジャーでもなくインディでもないという映画が限りなく多い。単館系でやっている作品というのは、これが本当に自主映画なのかという感じがします。
「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

 
矢田部:製作費でいったら1千万円~3千万円くらいのものが多いですよね。
 
家田:自主映画といったら、100万円位のお金を掻き集めてやっているものでしたから、1千万円かけて作っているのが自主映画なのかと思ったりもしますね。
 
矢田部:今、中野から渋谷への流れが家田さんから出ましたけれど、北條さんのユーロスペースは、ヨーロッパ映画をよく掛けていました。日本映画を多く掛けるようになって10年くらいになりますか。こういった流れをどう思いますか?
 
北條誠人(以下、北條):まず、今年、東京国際映画祭にどれくらい日本映画の応募があったのか教えて頂けますか。
 
矢田部:短編を入れて200本弱です。今までのなかでは一番多い本数です。
 
北條:『BRAVE HEARTS 海猿』や『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』というのは、夏休みの洋画を圧していますよね。もう一方で、200本ものインディペンデント作品があると考えたときに、第3の日本映画ブームというか、第3の日本映画黄金期という言い方が成立するかもしれない。
1回目は、1930年代にあったと言われていますね。2回目が1950年代後半から60年代にかけての黄金期。そして、ビジネスの点でも製作本数でも、今は第3の黄金期に入ったという言い方ができるのではないかと思います。それがなぜ可能になったのかと言えば、ひとつは、テレビ局と大手制作スタジオが手を組み、シネコンで徹底的に展開していくというやり方が進んできたから。もうひとつは、インディペンデントの人たちが中心となってデジタルで映画を作れるようになってきたことです。
大手が作った映画でも、インディペンデントの人たちが作った映画でも、同じスクリーンに映し出されて、見に行く人たちと、見せたいという意志を持つ人たちがいて、映画が第3の黄金期を迎えたという、ちょっと皮肉めいていますがそれが可能になった。これが、ここ10年間の動きを傍目で見ていた私の感慨です。もしかしたら、私たちは気づかないまま第3の日本映画黄金期に突入しているのかもしれない。
そうなると今度は、作り手と上映する側の意識が必要になってくる。ピークを迎えようとしているときの作られ方、お客さんに対する見せ方ですね。われわれはそこから何を学んで、何を見せていかなければならないのかというのが、今の劇場側の問題点なのではと感じます。何をピックアップするのか。あるいは、どういう人たちと組んで戦略を立てていかなければならないのか、ここ10年間の課題として、嫌でも考えざるを得なかったというのが現状です。
「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

 
矢田部:それは黄金期であるからこそ、ピックアップする側の意識、責任が大きいということですか?
 
北條:あるいは黄金期に入っているかもしれないけど、われわれは無意識のうちに黄金期を逃してしまうというのも、実はあるんじゃないか。もっと才能がある、もっと面白い人がいるとか、ビジネスとしてきちんとしたスキームが築けるのではないかということを含めて、黄金期に突入しているのであれば、なおさら慎重に進んでいかなければならないと考えます。
 
家田:邦画バブルがあったじゃないですか?
 
北條:でも、我々には全く関係なかったでしょう(一同爆笑)。
 
沢村:日本映画を見に行くのがダサいという風潮が、90年代後半にはあったと思うんですよ。デートで行くときは、日本映画は見ないという空気があった。それが、『世界の中心で、愛をさけぶ』くらいから変わってきて、むしろ今は洋邦が逆転している状況になっている。
そこで盛り上がっている間に、テレビ局映画のブームがあり、それがはじけたゼロ年代から2010年までの状況が今のような気がします。第3次ブームはテレビ局映画の時代だったと考えれば、今は第4次ブームのような気がしなくもない。はじけたあとに、また来ているという。
 
北條:第4次黄金期だとしたらその実感は全くない(笑)。もし実感があるとすれば、それは本数が多いからじゃないでしょうか。
 
 
昔と違って、今はグループでのムーブメントがあるのかもしれない
 
矢田部:今、第3次なのか3.5なのか、第4次にかかりつつあるとして、慎重にスキームを作らなければならないと北條さんは言いました。実際に、インディペンデントの映画祭が増えてきたし、家田さんは<MOOSIC LAB>という魅力的な企画に携わっておられます。沢村さんも<映画太郎>や<田辺・弁慶映画祭>などを個人的に応援しながら活動されていますが、そうした動きは、黄金期的な勢いを肌身に感じて能動的になさっているのですか?
 
沢村:<MOOSIC LAB>とか<映画太郎>の作品に関しては、劇場も編成も配給も全部すっ飛ばしています。自分たちで小屋を借りて、作ったものを自分たちで配給して、上がりも自分たちで分け合う。肥大化していくインディーズの捌け口がないところに、自分たちでどんどん肥大化していっている。ある意味、自己完結ですが、その先にVシネなどがある訳でもなく、新人として、なかなか映画の企画も通らない。そのなかで自分たちのシーンが肥大化している。
そのひとつの例が、<MOOSIC LAB>だったり<映画太郎>の動きに出ているのではないかと思っていて、僕は面白いと思います。
 
矢田部:肥大化というのは、必ずしも否定的な意味で使っていない訳ですよね?
 
沢村:出口がないならやっちゃえ、と。でも、できる環境も劇場を含めて出てきたし、ここから何か生まれてくるのではないかという気がします。
 
矢田部:(作品が)作られすぎているんじゃないかという感じはありますか? 北條さんがデジタルで作れるようになったことが、黄金期を支えているひとつの要因だと言いましたが、売り込みが多くて、これはどうなっているんだろう、ということは?
 
北條:作りすぎというよりも、キリがなくなっている感じはありますね。永遠にこれが続くのかなという。何だろうこのエネルギーはという、粘着質なエネルギーを感じます(笑)。
 
沢村:80年代の独立プロ・ブームとも、監督たちの動きはちょっと違いますよね。
 
北條:ぜんぜん違いますね。
 
家田:昔だったら映画を撮ったとしても、興行するとなればお金がかかるというのがあった。これくらい必要だからという話をすると、そこで引いてしまう人もいた。「僕は上映する気はありませんから」と。でも、今は『サウダーヂ』があったからじゃないですけれど、興行のためのお金も集めようという動きが出てきた。
また一方では、チラシや予告などの費用も昔に比べたらはるかに安くなっている。デジタル化が進んで、予告もDVDなどのデジタルで上映する劇場もある。だから、どんどんコストダウンして、作り手の皆さんが上映の権利を得るという方向になってきたし、興行側も面白ければやるという雰囲気になってきた。昔は面白くても、ちょっとできないというのがあったと思う。
 
矢田部:北條さんは昔と今との違いというのは感じますか?
 
北條:80年代後半から90年代までは、作り手に私たちが何か言うと論破されるんじゃないかという怖さがありました(笑)。それだけ、作り手の意識が強かった。向こうも真剣なぶん、理論武装してくる。今はそういう感じは希薄ですよね。良くも悪くも生意気な人はいなくなった。生意気な人はいないけど、粘着質でエネルギーはある。個々人ではなく、ワサワサきているような感じです。若い作り手をグループとして見ているせいかもしれないですけれど。
 
家田;本数が多くなったからなのか、いきなり宅急便でDVDが送られてくるんですよね。たまに名前を知っている人もいるけど、「えっ、この人知らないのに」という場合も多い。まだ見ていないときに電話が鳴って、「ご覧になってますよね?」と高圧的に言ってくることもある(笑)。少し腹も立つんですが、何かいらないことを言って劇場の悪口を言われると困るし(笑)。だから、「申し訳ないけど、ちょっと今立て込んでいて見てないのです」とお詫びしますけど。
 
沢村:ほんとにいろいろありますよ。「今、ユーロで公開中なので見に来て下さい」とか。北條さんのところにオカネを落とすのも癪だけど、そんなこと言う人もなかなかいないので、一応、行ってみるかと(一同爆笑)。
「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

 
矢田部:北條さんは粘着質なエネルギーがワサワサくる感じと表現しましたが、それは何かのムーブメントに結びつくような勢いを感じますか?
 
北條:微妙だなあ。
 
沢村:ムーブメントになればいいけれど。
 
家田:<MOOSIC LAB>なんかは、映画と音楽のコラボレーションという枠がある。そういう取り組みがあると、入っていく方も取っ付きやすい。いきなり新作の映画をやるよりは、こういうひとつの括りでゴソっと映画を提供した方がやりやすい。だから、企画自体は今後も面白く繋がっていくのではないかと思いますね。
 
矢田部:あれは、直井卓俊さんという豊かな発想の新しいプロデューサーが出てきたことも大きいと思います。沢村さんはムーブメントになればいいと言いましたが、なりそうですか?
 
沢村:<田辺・弁慶映画祭>を6年やっていますが、年々、作品本数が集まってきて、今年から有料化したのですけれど、それでも100本近く集まった。技術的なレベルはどんどん上がっているし、卒業制作だと機材も一流でひと通り教わっているから、内容の出来云々はともかく、クオリティレベルでは商業映画とほとんど変わらないようになってきています。しかも、それがある特定の学校からじゃなくて、いろんな大学から出てくるようになった。窓口が広がって、技術も上がってきて、そういう意味で肥大化というか、膨らんでいる感じがします。
2010年代の初頭は、商業映画に元気がなかった一方で、彼らなりの動きで膨らんでしまい、あとは出口さえあれば、一気にそっちに流れてもいいのじゃないかという気がするくらい盛り上がっていると思います。作家との出会いも増えて、一緒に仕事できればいいと思う人の数も増えたのは事実です。
 
矢田部:北條さんの微妙発言は、いかがでしょうか?
 
北條:彼らが、何を目指しているのかが、わからないんですよ。そこが「微妙」なのです。
1本作って、劇場公開したいと思って上映されたとする。じゃあ、その後はどうするのかという部分です。それは劇場側にとっても課題なのです。彼らの作品を1本ずつピックアップしたとして、劇場はそれでどうするのか。
 
矢田部:劇場もシビアなビジネスを強いられているので、育てている余裕はない。でも、皆さんはどこかで育てなくてはという思いもあると思うのですが、番組編成を組むときにどんな観点から決めていますか。
 
北條:育てるという観点でいえば、それは私たちの仕事ではなく、プロデューサーの仕事です。劇場で、例えばユーロスペースの場合は3週間レイトショーで上映したとして、どこかのプロデューサーと出会ってほしいと思う。あるいはお客さんと対峙して、作品のどこが受け入れられて、どこがダメだったのかを、身体でわかってほしい。それくらいしか我々にはできないです。
具体的にはプロデューサーが劇場と親しくて、次のデベロップに劇場側も入っていける環境になっていけば理想的だと思いますけれど、プロデューサーもそこまでの余裕はないでしょうし、作り手も余裕がないというところに嵌まり込んでいますよね。「黄金期」といいながらも、複雑な「黄金期」じゃないかという気がしますね。
 
矢田部:皆さん一斉に頷かれましたが、家田さんはどうですか?
 
家田:公開しているときに、若い監督たちがいろんな人やプロデューサーに出会うというのはあった方がいいし、実際、出会っているなと思うときもあります。まあ、テアトルさんでもそうだと思うのですが、<MOOSIC LAB>に絡めて言えば、監督も役者さんも誰かしらと繋がりを持つ場である感じはありますね。
北條さんが上映中に出会ってくれたらと仰っていましたが、その通りですし、実際出会っているんじゃないかなと思います。
劇場としてはK’s cinemaから見て、ユーロとかテアトルはステップアップというふうに思っています。場所は新宿にありますが、K’s cinemaが昔の中野武蔵野ホールみたいな場になればうれしい。ステップアップするためには小さなところから始めればいい。キャパの大きさもあると思うんです。K’s cinemaは84席でユーロやテアトルが100席以上のキャパだから、ハードルも高いじゃないですか。高いハードルで勝負するのは作家としてかなり大変だというのを、まず感じてほしい。うちの劇場でお客さんを満杯にしてステップアップしてほしい。
 
中編へ続く:中編では3人が注目する若手監督について、「日本映画・ある視点」部門上映作品について、カレーについて(笑)、さらに白熱した激論が続きます。お楽しみに!

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第24回 東京国際映画祭(2011年度)