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2012.10.21
[イベントレポート]
10/20(土)コンペティション出品作品『シージャック』Q&A

10/20(土)、コンペティション出品作品『シージャック』の上映後、俳優のソーレン・マリンさん、プロデューサーのトマス・ラドアーさんによるQ&Aが行われました。
シージャック

©2012 TIFF

 
司会者:初めての来日ということですが、いかがですか。
 
ソーレン・マリン(以下マリン):俳優のソーレン・マリンです。映画祭にお招きいただきありがとうございます。プロデューサーのトマス共々、とても嬉しく思っています。昨日、20時間かけてデンマークから来ました。映画は楽しんでいただけたでしょうか。皆様からの質問を楽しみにしています。
シージャック

©2012 TIFF

 
トマス・ラドアー(以下ラドアー):ご来場いただきありがとうございます。また、映画祭にお招きいただきありがとうございます。ソーレンが言ったとおり長旅でしたが、日本に来られて嬉しく思います。
シージャック

©2012 TIFF

 
司会者:それではQ&Aのスタートです。
 
Q:とても緊張感に溢れた作品で面白かったです。
交渉役のオマーについて質問です。オマーは「自分は海賊ではないし、失敗すれば殺される」と言っていましたが、海賊のリーダー的な存在に見えました。実際の海賊は、こういった手法を用いるのでしょうか。また、オマーは実は海賊のリーダーなのでしょうか。
 
ラドアー:交渉役は実際にいるそうです。実情は分かりませんが、FBIが海賊の交渉役を検挙したことがあるそうです。交渉役というのは、実際の海賊が使う戦略のひとつなんですね。ですので、オマーは海賊ではなく交渉役です。こうしたキャラクターを加えることで緊迫感が増すと思いましたので、登場させました。
 
Q:日本の海運会社で働いています。日本では、船会社や船の中の出来事がドラマになるのはとても稀なことなので、こうした映画を日本に持って来て下さり、ありがとうございます。
映画の中ではソマリアの海賊にジャックされていますが、実際にジャックされた乗組員たちはもっと残酷な目に遭っていると思います。そういったシーンを描かなかったのは、デンマークの船乗りさんやその家族に配慮したからでしょうか。
 
ラドアー:この映画で描かれているジャックされた乗組員たちの状況は、かなり現実に近いものだと自負しています。というのは、実際にジャックされた経験のある方々に話を伺って作ったからです。
撮影はケニアで行い、インド洋に船を出して撮影したシーンもあります。撮影に使用した船は、数年前に実際にジャックされた船なんです。乗組員役の中にもジャックの被害に遭った人がいたので、彼らから話を聞くことができました。
また、映画の完成後にデンマークの船乗りの方々に試写してもらったところ、現実に近い描写だとお墨付きをもらいました。
 
Q:実際の船乗りさんも出演されているのですか?
 
ラドアー:俳優はCEO役のソーレンとコック役、エンジニア役だけで、それ以外は全員実際の船乗りの方々です。
 
司会者:海賊も本物の海賊なのですか?(会場笑)
 
ラドアー:本物の海賊は雇っていません。海賊役は、ケニアに住む実際のソマリア人の方々です。道でスカウトして、出演していただきました。
 
Q:この作品自体は実際に起きた事件を元にしているのでしょうか。また、モデルになったというシッピングカンパニーのヘッドの方に、CEO役のソーレンさんがお会いしたことがあるインタビュー映像で話していましたが、実際のことが映画にどれだけ反映されているのか、そして俳優として実際に会った方から得たものをどうやって反映したのかを教えてください。
 
マリン:実際にこのシージャックが起きたわけではないのですが、過去10年くらいの間にデンマークで起きたいくつかのシージャックにインスパイアされて、この映画は作られました。
特定のシージャックをベースにしているものではないですが、私はコペンハーゲンにある実際の海運会社のCEOに話を聞き、何日か過ごす機会がありまして、これは大変役作りの助けになりました。彼と一日中、ずっと一緒に過ごして、彼がどういう歩き方をするか、話し方をするか、どういった洋服を着ているか、そういうことまで色々と参考にさせていただきました。
このCEO自身、数年前に起きた彼の会社のシージャック事件の交渉に携わった経験があり、実際にネゴシエーター、または海賊たちと電話で交信した経験のある社長だったんです。それで、率直に「そのときのお気持ちはどうでしたか」と聞いたところ、もう泣きそうになられて、一言、「話したくない」とおっしゃった。それだけで私にとってすごくいい参考になりました。なぜならば、数年前とはいえ、それだけストレスのたまるすごい経験だったのだということがわかりましたし、私の演じたピーターですが、彼は社長として大変強い責任感を感じています。とにかく死体ではなく、生きて乗組員たちを家族のもとに戻したいという一心でやっているのですが、彼の精神状態というのも本当にギリギリまでいっているということを考えながら演じました。
 
Q:船の上でのシーンですが、陸からどのくらい離れているところで撮影したのでしょうか。また、何日くらいかけて撮影したのかを教えてください。
 
ラドアー:ケニアで2週間、準備期間を設けまして、実際の撮影は3週間、船の上で行いました。船は4隻使って、撮影に使った船が1隻、そのほかは撮影のための船です。私は陸からの実際の距離はわからないんですが、かなり離れています。映画のような形でシージャックされてもおかしくないようなインド洋の沖合で撮影していました。実際にシージャックというのは頻繁に行われているので、何かあったときのために、撮影用の船の中にもケニアの警察から何人か武装した警官が乗り込んでいました。
これは監督から聞いた話なのですが、監督がある日コーヒーを飲んで休憩していたら、武装した警官たちが「自分はライフル銃に空砲を入れている。なぜなら、ソマリアの海賊たちはとても痩せているので、実弾を使うと内臓が全部飛び出すなど大変なことになってしまうからだ」と普通に話していて驚いたそうです。それで監督は「怖いところに来ているんだ」と感じたと言っていました。プロデューサーとしても、許せる危険度のぎりぎりのところで撮影したという感じで、本当に怖い場所だなと実感しておりました。
シージャック

©2012 TIFF
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