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2012.10.25
[イベントレポート]
「人気監督が資金集めに協力してくれた稀な作品です」――10/23(火)WORLD CINEMA『ストラッター』:Q&A

10/23(火)WORLD CINEMA『ストラッター』の上映後、カート・ヴォスさん(監督/脚本/製作/撮影)、サラ・アシュレーさん(女優)が登壇し、Q&Aが行われました。
ストラッター

©2012 TIFF

 
司会:カート・ヴォス監督とサラ・アシュレーさんの登場です。皆さん、大きな拍手でお迎えください。
 
カート・ヴォス監督:今日はこんな大きなシアターで、たくさんの皆さんに集まってもらってうれしいです。お招きくださった映画祭に心から感謝しています。
ストラッター

©2012 TIFF

 
サラ・アシュレー:東京に来られて、とても嬉しいです。お招きいただいてありがとうございます。
 
司会:ヴォスさんは共同監督、脚本、撮影も務めていますね。自分で撮影する方が仕事しやすいですか?
 
ヴォス監督:今回初めて撮影もこなしたのですが、ひとり説明する相手が減るから、とても楽でした。この作品は実は多くて4人、ふだんは3名のスタッフで作りました。僕、アリソン、録音担当者だけです。もうひとりはアリソンの息子でBカメラや照明が必要なときに来てくれました。少人数のクルーで作品を作っていたので、大変自由にできましたよ。軽快に撮影できて、スタッフのお守りをしないで済んだから楽でした。
 
司会:サラさん、撮影現場の雰囲気は如何でしたか?
 
サラ・アシュレー:キャストもクルーも少人数でとても楽だったし、仲間うちでリラックスした雰囲気でした。長編映画に出演するのは初めてだったのですが、そうした意味でも、とても有り難かったです。
ストラッター

©2012 TIFF

 
司会:アメリカのインディーズ映画って凄いですねえ。少人数でもこれだけの作品ができるんですから。最後のエンドロールを見ていたら、「すべてクラウド・ファンディングで製作」と書いてありました。その下にサポーターの名前で、クエンティン・タランティーノ、モンテ・ヘルマン、ガス・ヴァン・サントらの名前が並んでいます。
 
ヴォス監督:彼らは資金を寄付してくれたわけではありませんが、資金集めのためのギフトをくれました。それを売ったり、寄付してくれた人に御礼に差し上げたりしました。ちなみに、コーエン兄弟は『ビッグリボウスキ』の撮影で使ったボウリング玉を寄贈してくれました。こんな話をすると、ハリウッドの人たちは凄く助け合って映画づくりに励んでいると思われるかもしれません。決してそんなことはなくて、これは大変レアなケースです。この作品に限って、と言っても過言ではありません。なぜ可能だったかというと、アリソンが大変な人格者だからです。誰にでも優しいし、みんなにとても愛されている。彼女のためなら、というので、これだけの協力体制が生まれたのです。
 
司会:本当はアリソンさんも来日する予定だったのですが、直前にテレビの仕事が入ってしまい来日できないと、本人から直接、長いお詫びメールをもらいました。さて、製作費の話に戻りましょう。予算はどれくらいで?
 
ヴォス監督:2万2千ドルで作りました。この予算内で何ができるか考えながら、脚本を書いたのです。
 
司会:日本でもインディーズの監督が元気で注目を集めていますが、お金を集めるのに苦労している。この作品はほんとに良い例になると思います。
 
ヴォス監督:アリソンと私は25年間、インディーズで作品を撮り続けています。今回で3作目になります。彼女と私は常にロサンジェルスを舞台にした実際の音楽シーンをドキュメンタリー・タッチで描くことを実践してきました。この映画に出てくる人たちはすべて実際のミュージシャンで、自分たちで曲を書いて演奏している人たちです。ヘア・アクセサリーを着けてロック・スターを演じるトム・クルーズは、私たちの映画には登場しません(笑)。
ストラッター

©2012 TIFF

 
Q:私は映画の配給宣伝会社でアルバイトしていて、将来、今回のような映画を買い付けて、日本で公開することを目標にしています。いま23歳ですが、友人や中学生以上の学生の多くが映画館に足を運ばず、DVDで済ませてしまう状態です。映画館で映画を観る魅力や素晴らしさを彼らに伝えるのは、何をすればいいでしょうか?
 
ヴォス監督:いい質問ですね。有り難う。残念ながら、僕はそれに対する簡単な答えを持っていません。多くのインディーズ監督が抱えているジレンマだと思います。強いて言えば、試写会を一つのイベントにすればいいんじゃないでしょうか。ただ映画を見せるのではなく、キャストが登場してこうしたQ&Aをやったり、音楽をかけるとか、何か映画以外のアトラクションをつけて上映するのはいいと思います。
 
司会:われわれも参考にさせて頂きます(笑)
 
ヴォス監督:今日もかなり大きなイベントになっていますから、大変いいんじゃないでしょうか(笑)
 
Q:素晴らしい映画を有り難うございます。コンペティションの作品には臓器移植の問題とか、考えさせる作品が多いのですが、この映画はとても楽しめました。新鮮だし、爽やかな気分になれました。この作品はモノクロで撮っていますが、なぜそうしたのですか?
 
ヴォス監督:理由は3つあります。アリソンと私が最初に撮った『ボーダーレイディオ』がモノクロだったから。これは1986年のロサンジェルスのパンク・シーンを描いた作品です。Xやブラスターズといったバンドを描いています。2番目の理由は、クラウド・ファンディングで作った作品であり、プロデューサーが不在のため、彼らの意見を聞く必要がなかったから。3つ目は、僕自身モノクロの質感が好きで、モノクロ映画が大好きだからです。
 
司会:劇中にサイレント映画が登場しますね。ジャック・ビックフォードのことはまったく知りませんでした。クラシックな映画もお好きなんですね。
 
ヴォス監督:あれはすべてアリソンの嗜好(笑)。彼女はサイレント映画オタクで、サイレントのことなら何でも知っている。彼女があの映像フッテージを見つけたのですが、パブリック・ドメインだったのでタダで使うことができました。
 
Q:とても楽しめる映画でした。少人数で撮った映画とのことでしたが、音楽映画ということで、録音やサウンド面でどのようなやり方をされたのですか。また海外でのオーディエンスの反応についてもお聞かせください。
 
ヴォス監督:とても汚いスタジオで録音したのですが、若い連中が多いですから僕が父親役になって、彼らが騒ぐのを制しながら録音しました。映画は7月に完成したばかりで、公開はまだこれからです。これまでミュンヘンをはじめ4つの映画祭で上映されましたが、大変反響は良かったです。
 
Q:すごく楽しませてもらいました。僕は映画も好きですけど音楽も好きで、そのなかでも自分的に大好きな3人のミュージシャンがこの映画には登場します。アリエル・ピンク、ヴィクトリア・ウイリアムス、この映画のスコアも担当しているJ マスシス。この3人が登場するのは最初から意図していたのですか。それとも、LAの音楽シーンにいたから偶々という感じだったのですか?
 
ヴォス監督:先ほど話したように、この映画に出演している男性はほとんどが実際のミュージシャンであり、アリス・ホランダーというプロモーション・ビデオを撮っている女性はフィルムメーカーです。そうした点で、この映画はドキュメンタリーに近くて、出演者が実際にやっていることを映画のなかで演じています。ヴィクトリアとJ マスシスはアリスが撮った『ガス・フード・ロジング』にも出演していて、長い付き合いがあります。そんな感じで付き合いのあるミュージシャンたちに出演してもらっています。
 
司会:有り難うございます。この作品は10月26日の金曜にもう一度上映されます。その時にもQ&Aがありますので、また観たい、監督やサラさんの話が聞きたいという方は、ぜひご来場下さい。またカート・ヴォス監督は同日開かれるシンポジウム「クラウド・ファンディングは本当に映画を救うのか?」(文化庁映画週間)にも参加され、この映画とクラウド・ファンディングの関わりをお話し頂くことになっています。文化庁映画週間のホームページに告知が出ていますので、皆さん、宜しければご覧下さい。
リンク:文化庁映画週間
 
ヴォス監督:映画監督を目指す若い人たちにとって、大変いい時代になってきたと思います。シンポジウムへの参加を楽しみにしていて、いろいろお話ししたいと思いますが、何か質問がある方はこの後でも、どうぞお気軽に僕のところに来て聞いて下さい。
 
* 文化庁映画週間シンポジウム
「クラウド・ファンディングは本当に映画を救うのか?」
10/26 13:00〜(入場無料・事前申込み制)
http://bunka-cho-filmweek.jp/index2.php/portfolio/moviecampus/

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