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2012.10.26
[イベントレポート]
10/24(水) コンペティション部門 『黒い四角』 記者会見のご報告

コンペティション 『黒い四角』 記者会見のご報告
日時・場所:
10/24(水) 13:15~ @TIFF movie café
登壇者:
奥原浩志(監督/脚本/編集)、中泉英雄(俳優)、鈴木美妃(女優)
黒い四角

©2012 TIFF

 
奥原浩志監督、そして主演の中泉英雄さん、鈴木美紀さんに様々な質問にお答えいただきました。
 
Q:本作は舞台が中国で、全編北京語ですがその理由は?
 
奥原浩志(監督): 中国で撮った理由ですが、僕は文化庁の芸術家海外研修制度を利用して2008年9月に北京に行きまして、行ったからには1本撮って帰ろうと思っていたのが4年たってしまった、というのが経緯です。題材を選んだ理由ですが、北京に渡ってからいくつか脚本を書いた中でこれが一番素直に書いた題材で、あえて選んだというより必然的に生まれてきた物語だと思います。
黒い四角

©2012 TIFF

 
Q: 出演のお二人に質問です。どちらも大変難しい役だったと思うのですが、役柄へのアプローチと、苦労した点を教えてください。
 
中泉英雄(俳優): 前半部分と小説のシーンが抽象的なため、自分の中でまだわからないところがあると渡航前に奥原さんに伝えたところ、あまり芝居の準備はするなと言われたので、フリープランで北京に乗り込みました。苦労した点ですが、これまでに2~3本の中国映画に出演していますが、中国語はその際に生活しながら覚えた程度でおふたりほど得意でないので、セリフを中国人の方に録音してもらい練習しました。
黒い四角

©2012 TIFF

 
鈴木美妃(女優): 私は現代のシーンでしか登場せず、等身大の役柄だったので作りこむことはせず、逆に削っていく、シンプルに、ということを意識して演じました。私は2006 年に活動拠点を北京に移してから7 年になります。中国語に関しては、中国にいる期間が長いのである程度はできますが完璧ではありません。ただ完璧にしようとは考えず、むしろ言葉にとらわれず、できる範囲で自然にと思っていたのでそこまで苦労というものはなかったです。
黒い四角

©2012 TIFF

 
Q 中国で活動される魅力・ご苦労を教えてください。
 
中泉英雄さん: 僕の場合とてもシンプルなのですが、いい役で出演できれば国は問いません。いちばん大きいのはいい役で出演できるということです。カメラの前に立ってしまえば、どこの国で演じても変わらないのでそういう意味では苦労はなかったです。
 
鈴木美妃さん: 中国に渡ってほぼゼロから一人で始め、最初はセリフが一言の小さな役であっても出られるものに出ていたので、成果や応援してくれる方が増えたことを感じます。何もないところから築きあげてきたという思いはとても強いです。
 
監督: 日本にいた頃も低予算の映画を撮っていましたが、結局いちばんの苦労はお金に尽きます。低予算の映画をどう形にしていくかという苦労は日本も中国も変わりません。ただ日本の低予算映画製作の方法論は知っていますが、中国ではそれをいちから探りながらやらねばならず大変でした。現場に入ってからは中国映画のやり方で製作を進めましたが、中国には低予算映画を作る環境がなく、僕がやろうとしていることをわかってもらうのに壁がありました。
 
Q 「黒い四角」は具体的に何を象徴しているのか?アイディアの発端は?
 
監督: 物語自体はかなり抽象的で、死んだあとの霊魂と、愛とのふたつをテーマとしました。それらをどう画面に具象として目に見えるものにしていくかを考えた時に、登場する人物たちや黒い四角を思いつきました。時代と空間を行き来する物体がどれくらい物語との関わり合いを持つべきか、あまり意味深なものにもしたくなかったですし、あまり抽象的すぎるものにもしたくありませんでした。
いろいろ考えた末、ジャオピンという男がたまたま見かけた絵があり、自分でも黒い絵を描いてみる。翌朝、空を見ると黒い物が飛んでいる、それくらいの関連性で、ひょんなことから始まる感じを表現しました。
 
Q 現在の日中関係の状況で、本作品は中国で公開されるのでしょうか?
 
監督: 現在の形だと公開できません。中国では映画が上映される前に撮影・脚本・上映についての審査があるのですが、却下されても何度も申請ができるので、再度申請をしようと動いています。中国にはミニシアターがあるわけではないですし許可が下りたとし
ても上映できるということではないと思いますが、いずれ中国での上映が可能となるように進めています。
 
Q コンペティション部門で出品されている中国映画『風水』について中国側が参加をとりやめたいとしていますが、この件について監督はどう思われますか?
 
監督: 『風水』については東京国際映画祭がとった態度は非常に立派だったと思っています。最初に上映をとりやめたいという記者会見が北京であり、どうなるのかなと思い見まもっていたのですが、映画祭の方では当初の予定通り上映し、私も見に行きました。
いちばんすごいと思ったのは『風水』のエグゼグティブ・プロデューサーから観客への感謝のコメントを入手し、上映前に発表したことです。映画を作り、観客それも外国のお客さんに見せたくない映画製作者や監督なんて絶対にいないわけです。見せたいに決まっています。ですが彼らは彼らで国内の事情やそれぞれの立場があり、それを批判しても仕方がないのです。それに対し文句を言うわけでもなく、受け止めてかつ上映する、それで映画祭の威厳も保たれるわけです。素晴らしい対応だったと思っています。
 
黒い四角

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