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2012.10.26
[イベントレポート]
10/22(月)特別招待作品『旅の贈りもの 明日へ』:舞台挨拶

10/22(月)、特別招待作品『旅の贈りもの 明日へ』の上映後、前田 哲監督と主演の前川 清さんによるQ&Aが行われました。
『旅の贈りもの 明日へ』

©2012 TIFF

 

まず、おふたりからひと言ずつご挨拶をいただきたいと思います。
 
前川 清さん(以下、前川さん):お忙しい中、本当にわざわざありがとうございます。いつもは歌い手として仕事をしており、自分自身でも映画の世界は夢のようでした。どんなふうに皆さんに見ていただけるのか楽しみです。幸せでございます。ありがとうございます。
前川清さん

©2012 TIFF

 
前田 哲監督(以下、前田監督): みなさんこんばんは。今日はわざわざありがとうございます。僕は今まで10代20代に向ける映画が多かったのですが、今回大人の映画というものを撮ったつもりです。ぜひ大人の方に届けばいいかなと思います。
前田哲監督

©2012 TIFF

 
先週の土曜にオープニングを飾ったグリーンカーペットを前川清さんも歩かれました。いつもステージでたくさんのお客さんの前で歌ってらっしゃいますが、グリーンカーペットを歩くというのはいかがでしたか?
 
前川さん:グリーンカーペットの存在をまず知りませんでした(笑)。ステージにおいても、僕はあまり歌う時に動かないので、「一坪歌手」と言われていまして、ステージが小さくて済む歌手です。そんな僕にとって、あのようなグリーンカーペットは思いもよらない出来事で、新鮮さと嬉しさと照れくささでいい思い出になりました。
 
前田哲監督は、『ブタがいた教室』を出品された第21回東京国際映画祭のときも歩かれ、そのときは観客賞を受賞されました。今回前川さんと一緒にカーペットを歩かれて、前川さんの様子はいかがでしたか?
 
前田監督:前川さんがいろんな方に丁寧にサインをされている姿が感動的でした。福井での撮影中もギャラリーや地元の方が見に来られるわけです。そういう方に非常に丁寧に写真撮影に応じられるんですよ。撮影そっちのけで!(笑)
 
福井での撮影や完成披露試写会のときに、前川さんが実はまだ作品をご覧になっていないとお聞きしました。もうご覧になりましたか?
 
前川さん:まだ観ておりません(笑)。僕は歌を歌っているときも、自分の歌を歌うのにもどっちかというのも苦手な方で、粗捜しをするんですね。映画にしても、役者というのも初めてなものですから、粗が目に見えるようで、自分自身がいやで自信がないので観ないようにしております。
 
監督は観てほしいですよね。
 
前田監督:でも、最近観ようかなという気になっておられます。なぜかと言うと、周りが前川さんの演技がいいと、しきりに言うのでそういう声が少しずつ耳に入ってくるのですね。ご本人もその気にちょっとなっているんじゃないかなと。
 
前川さん:実をいうと、僕の友達から「下手だった」とメールがきました。「けれど、泣けた」と。ただもう出るなとも言われ、「演技は下手だったんだけれども、ストーリーはよかったぞ」といういい言葉をいただきました。
 
前田監督:演技を越えたものが前川さんにはあります。存在自体が語っているので、何も芝居をする必要がないと思います。
 
前川さん:けど、芝居をするから役者なのですよ?(会場が笑いに包まれました!)
 
今日は、前川さんのファンの方もいらっしゃるので、質疑応答タイムを設けようと思います。質問のある方いらっしゃいませんか?
 
Q.歌手でステージに立つときとの心境の違いと、映画で一つ一つのセリフを言うときの感情というのは、どのようなイメージで演技されましたか?
 
前川さん:映画と歌というのは全然違います。歌は歌詞を忘れても音楽は流れてきますし、それでも歌うと3分くらいで終わってしまいます。しかし映画は途切れ途切れです。だからどういう風に自分で演技とかではなく、正直言ってちゃんとセリフを言えるのかなとか、大丈夫だったかなと心配でした。ちょっと笑うといやらしい笑いだと言われたりして、とても難しいのです。しかし歌に関してはほとんど笑わなくてもいいわけです。
そうしますと、つなぎつなぎは監督が考えていてあとでつないで作るのだから、その監督の言うことを聞いて表情などを作りました。僕は何にもしないで与えられたその場のシーンをやっていましたね。
 
信頼関係がお二人の間に生まれているということですね。また映画に出ていただきたいですね。最後に、お二人から一言ずつこれからご覧になる方にメッセージをお願いします。
 
前田監督:この物語は、僕の中で「喪失の物語」として作っています。主人公は、17歳の時に一番大切な人だった文通相手からさよならを言われてしまいます。その喪失の気持ちを抱えたまま42年間過ぎて60歳を迎えた男が、再びそれに向き合うという話です。やはり東日本を襲った大震災は、作り手である自分に影響を及ぼさないわけがありません。しかし、その思いをあからさまに出すのではなくて、物語の中に織り込むようにしてこの物語を作ったつもりです。悲しみというのは、時間がたてば薄れていくものではなく、逆にある時ふと蘇るように悲しみが押し寄せてくることもあるんじゃないかと、今いろんな日本の状況を見て、決して人が忘れてはならないものではないかと思っています。少しでもそういう一つの光になればいいなと思ってこの映画を作りました。ぜひ見ていただきたいと思います。
 
前川さん:私は今64歳です。僕の場合は歌い手として仕事をさせていただいていますが、60代の方というと団塊の世代です。今まで追われていた仕事が終わり、第二の人生が始まります。それは必ず訪れるもので、あとの一生を第二の人生でずっと過ごします。そんなときに、この映画をご覧になり、次のステップである第二の人生をなにか良いものだなと思って、もっと今まで以上に楽しんでいただければと思います。少しの切なさはありますがこの映画で夢を感じ、温かく第二の人生を過ごしていっていただける映画になればと思います。
 
質疑応答タイムには、ファンの方から早くも続編の希望も飛び出た舞台挨拶。
前田監督をして「存在自体が語っている」と言わしめた前川さんの初演技。作品への期待が高まる舞台挨拶でした。

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