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2012.11.01
[イベントレポート]
「おばあちゃん役に交渉した時、「野菜を売らなくちゃならないから」と断られました」―10/24(水)アジアの風『ホメられないかも』:Q&A

10/24(水)、アジアの風部門出品作『ホメられないかも』の上映後に、ヤン・ジン監督によるQ&Aが行われました。
ホメられないかも

©2012 TIFF

 
司会者:それでは監督、まず皆さんにひと言ご挨拶をお願いいたします。
 
ヤン・ジン監督(以下、監督):本日はこの作品を見に来てくださり、ありがとうございます。
 
Q:映画のいくつかのシーンをアニメーションで描いたのにはどのような意図があったのですか?
 
監督:アニメーションを入れたのには、2つ理由があります。
1つ目の理由は、回想部分の表現を効果的にするためです。例えば、昔の思い出や家族のことを振り返っている場面や、作品が終わりに近づくときの場面です。アニメーションに出ていた本物の家族が、実写で本物の人間として現れてくるという効果を狙いました。
2つ目の理由は、実写ではなかなか撮ることができない想像の部分を表現するためです。例えば、ハチに糸をつけて空に向かって飛び上がる場面や猫に足をかまれる場面は、アニメーションでないとなかなか撮ることができませんでした。
 
Q:大変可愛らしい映画でした。お姉さんは地下に居を構えていましたが、あれはどういうところなのでしょうか?
 
監督:あの地下の家屋は、山西省の南部と河南省の北部の地域に分布している独特の家屋の形式です。地面に四角の穴を掘り側面に穴をいくつかうがって、近くに井戸を造り、そこを住まいにしています。2mくらいの高さまでしっかりと石を積むので堅牢な造りになっていて、めったなことでは崩れてきません。
今となっては、この形式の家屋に住んでいる人はあまりいません。昔は地主のようなお金持ちが住んでいましたが、現在住んでいるのは年老いた貧しい人たちですね。また、旅行者用に新しく造る場合もあります。
 
Q:とてもいい映画でした。黄河流域がこの作品の舞台となっていますが、それはなぜでしょうか?また、昔の中国の男尊女卑の意識が作品に反映されていると思うのですが、その背景を教えていただければと思います。
 
監督:この話は、幼かったころの僕たちと祖母のかかわりを描いたものです。実際に祖母たちには男尊女卑の意識があり、男の子である僕や弟のことをとてもよく可愛がってくれました。
幼いころ、僕は自分のことをとても賢い人間だと思っていて、姿をくらましてみようと友達のところへ行ってしまったことがあります。その時祖母は本当に心配して、トイレに行くのも我慢してあちこち探しまわってくれました。ようやく僕を見つけた時には、まさにこの映画で描いたような雰囲気になりました。とても悪いことをしたな、とても恥ずかしいなと思った記憶があります。
ちょうどその事件があった頃、僕には実は姉がいて、別の家庭にもらわれていったのだという事実を初めて知りました。初めて黄河の大きな流れを目にしたのは、その姉を訪ねた時です。実は、黄河の川べりには自転車でよく遊びに行っていたのですが、そこはそれほど広い流れではなかったのです。いつも泳いでいた支流の小さな流れではなく、滔々と流れる大河の流れを目にした時は、その大きさに震えるほど驚きました。

©2012 TIFF

 
Q:女の子が養女にもらわれて行きますが、現在でもそのようなことはありますか?
 
監督:はい、今もあります。叔母の孫は男の子だったのですが、もらわれていきました。当時はどうしても男の子が欲しいという家庭が多くて、女の子をいらないという人もいたそうです。私の父は一人っ子政策を担う計画出産委員会の委員で、そういう子どもを育てるための家庭を探す仕事をしていました。
 
Q:ワンカットの中に色々な台詞、動作が含まれていましたが、子どもたちにどのような演出や指導をされたのでしょうか?
 
監督:まず何人かの子どもを選び、踊りや歌などで遊びながら段々と台詞を覚えさせていきました。遊びを通して、徐々にこの台詞の中に描かれているのが本物の世界なのだということを子どもたちがリアルに感じられるようにしました。その結果、彼らはうまく台詞を言えるようになっていきました。
 

司会者:皆さんも子どもたちの自然な演技にびっくりしたと思いますが、作品全体での台詞とアドリブの比率を教えてください。また、体操をしながら喋るシーンがすごく良かったのですが、あの絶妙なズレは演出なのでしょうか?
 
監督:アドリブは基本的にありません。私が台本に書いた台詞は全て北京語(標準語)なので、それを故郷の言葉にして話してもらいました。体操のシーンは、あの子たちに自由に演じさせ、調整をしていきました。例えば、あまり楽しそうでなかったり嬉しそうでなかったりしたら、「もっと楽しそうに」と演技指導をして、演じさせました。
 

Q:最後に出てきたブタがとても可愛かったのですが、あれは演技なのでしょうか、偶然なのでしょうか?
 
監督:映画の演技には方向があると思います。それは、1番上手にごく自然に演じることができるのは子どもと動物であって、それらを自然に演じさせることが難しいのだということです。
ネコに関しては、私が幼い頃にはたくさんの黒猫がいたのですが、いざカメラを回して撮影しようとすると黒猫が見つかりませんでした。結局、白猫を捕まえてきて黒く塗りました(笑)。最後に出てきたブタは、養豚場から1日30元で借りていました。たくさんいるブタのなかで1番大人しく言うことを聞くブタで、養豚場の人もこのブタを薦めてくれました。その後あのブタは養豚場に戻り、殺されてしまいました。
 
劇中に出てくる2人のおばあちゃんの演技がとても自然でした。彼女たちは素人なのでしょうか、役者なのでしょうか?
 
監督:最初に出てくる、シャオポーとヤン・ジンにお菓子や食べ物を与えてくれるおばあちゃんを演じたのは、町で野菜を売っている方でした。実は、おばあちゃん役を演じてくれませんかと最初に交渉した時、「野菜を売らなくちゃならないからそんなことできないわよ」と断られたのです。そこで私たちは、おばあちゃんが売っている野菜を全部買い占めて、撮影スタッフで食べることにしました。それでやっと映画に出ることを了承してくれました。後にわかったことですが、このおばあちゃんは自分の母親の友達のお姉さんだったのです。
最後に登場するヤン・ジンのおばあちゃんは、以前劇団に所属していた女優さんです。所属していた劇団はとっくに解散してしまい、町の中心でやはり野菜売りをしていました。
 
ホメられないかも

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