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2012.10.16
[インタビュー]
邦画ファン、映画製作関係者必見!!スペシャル企画~東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門 座談会 (後編)

「日本映画・ある視点」部門 座談会

 
スペシャル企画~東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門 座談会 (後編)
 
映画館(こや)の番組編成プロたちが、今のインディペンデント映画界を語る。
そして、本年度「日本映画・ある視点」の見どころも満載! 激論白熱!?の最終回第3弾!!
 
北條誠人(ユーロスペース支配人)×家田祐明(K’s cinema番組編成)×沢村敏(東京テアトル株式会社 映像事業部 興行部番組編成)
司会:矢田部吉彦(TIFFプログラミング・ディレクター)
 
 

出品作のその後のケアをどこまで考えていくのか
 
北條:80年代生まれの監督と60年代生まれの監督との間に、演出の明らかな差が出てきましたね。
 
家田:20代の人がいないですね。
 
矢田部:吉野竜平監督も見かけは学生みたいですが、30代だったと思います。
ところで、60年代と80年代の差という話が出ましたが、「日本映画・ある視点」部門には、そうした差が見えた方が面白いのか、あるいは80年代なら80年代で括ったほうがいいのか。この部門が存続していくとしたら、どういうやり方がいいと思われますか?
日本映画全体に貢献することが出来ればと考えた場合も含めて、ご意見を頂ければ嬉しいのですが。
 
家田:それこそ、TIFFとフィルメックスの時期が近かったり、TIFFでやる日本映画とフィルメックスでやる日本映画とどう差別化しているのかなど、こちらから訊きたいくらいです。もしかしたら、一緒に手を組めばいいじゃんって思ったりもするんですが(笑)。
 
矢田部:それは、しょっちゅう考えますね。間に挟まれる監督は、TIFFとフィルメックス両方からオファーを受けて困っているとか聞くと、そんな下らないことで困らせたくはない。だから、どこかで一緒になるのもオール・ジャパンとしてはいいことかなと思いますけど。
 
北條:海外から来た人たちが、この部門の日本映画を見てどう思うのでしょうね。日本のインディペンデントというのは、震災とソーシャル・プレッシャーしかテーマがないのかと思われてしまうのではないかな。
「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

 
矢田部:この部門の趣旨として、ちゃんと英語字幕を付けて海外の人たちに見せたいというのがあるので、今、北條さんが言ったようなことを思うでしょうね。それが去年から今年にかけての傾向なのかもしれません。
 
家田:作家も、震災があって、震災を題材に撮りたがっている気がしますね。何かしら作品に取り入れてメッセージを残したい。今泉(力哉)君の映画を見ても、そういうものを感じます。直接、瓦礫の山を出すとかはしませんけれど、何らかのかたちで3.11のことをこの1年は出さざるを得ないという感じですかね。
 
矢田部:表に出なくても影響を受けていないはずがない。それが、どこか抑圧的なテーマとなり、たとえ震災を題材にしていなくても、浮き出て来るのかもしれませんね。
 
沢村:インディーズにとっては、映画祭の役割はどんどん高くなっているんですよ。発表する場として、どこかで名前を売るために、映画祭に出たいという気持ちが強い。今回、最高の本数ですけど、<弁慶>もそういうかたちで増えてきたというのは、映画祭の役割が大きくなっていることの証しです。だから、その後のケアをどこまで果たせるのか、どういう機能を果たせるのか、映画祭自体も本気になってやる必要が出てきそうです。
他には、全国にインディペンデントの映画祭があるので、全国の受賞作を束ねてみたらどうでしょう。各地方の皆さん手弁当でやっているので、そこで頑張った人たちの特典にもなる。TIFFがハブの役割を果たして、集中させることも全国的なメリットになると思いますね。
また、公開されているインディペンデント映画もいっぱいあるので、集めて発表する場があってもいい。ワールド・プレミアはコンペでやりつつ、話題になっているインディペンデント作品を集めて上映する部門を設けてもいいかなと思います。
 
矢田部:それは、いつか作りたいと思っているのです。例えば、「日本映画・ある視点」ショーケース部門を。
本数が増え、発表の場を求めているとすれば、やはり他の映画祭と合併しない方がいいですね(笑)。TIFFはTIFFで本数をキープした方が。さっき、劇場は作家を育てられない、きっかけを与えるだけだと言っていましたけれど、映画祭は育てることが求められている機能ですから。
 
家田:監督にはそれぞれ目的がありますから。応募して賞を獲るのが目標と思っている監督と、劇場に掛かってなんぼと思っている監督もいるかもしれないし。
「日本映画・ある視点」部門 座談会
 
矢田部:本当は、劇場で掛けて初めてスタート地点に立てる。そこをはっきり意識していない監督が多い気がします。TIFFで賞をもらって、海外の映画祭を旅して、国内で公開が決まらないというケースもあります。
『不惑のアダージョ』の井上都紀監督は大変苦労した。映画祭に出れば何とかなると思っていたら、ユーロの公開まで2年もかかってしまった。よく頑張り通したと思うのですけど、その辺の事も監督たちはもっとわかってほしいと思います。
 
沢村:縁もあったりしますけどね。プリミティブですけど、出会いとかで映画が掛かるきっかけにもなる。
 
矢田部:もっと劇場を意識してほしいと思って、この鼎談を思いついたんです。沢村さんはこの部門の目指す方向性について何かありますか。
 
沢村:インディペンデントの最高峰となってほしい。
 
北條:インディペンデントの最高峰って何だろう(笑)。
まあ、海外の人がどう見るのかというのが気になりますよね。だから、海外の人たちに対して、この部門はこういうものですという指針を提示した方がいい。例えば、38歳以下限定であるとか、自分がインディペンデントだと思っている人間がみんな来るというやり方もあるでしょう。そういう、「日本映画・ある視点」イコール何々という明確な柱があって、その柱に興味のある人が見に来るようにした方が、お客さんもチケットを求めやすいし、作り手も応募もしやすいと思います。
次に、作品を審査する側の選択ですよね。審査員によって賞は変わってきますから。敢えて仲が悪い人間をピックアップするくらいの蛮勇をして、活性化させた方が面白いように思います。仲が悪いという例ではないですけれど、山本政志監督みたいなインディーズおもいの強いキャラクターが審査員をするのも面白いかもしれない(笑)。
 
沢村:たしかに、グローバルな視点はいいですよね。世界を目指すという明快な視点。
 
北條:映画美学校が、最強のインディペンデント映画の作り手を育てるというメッセージを発しましたけれども、最強のインディペンデント映画を見せますみたいなスローガンがあってもいいかもしれません。
 
沢村:商業性と芸術性とか、いろんな問題が出てきそうですね。
 
北條:その場合、何かとんでもない作品がいい。それこそ、横浜聡子さんの『ジャーマン+雨』を最初に見たときの、「この人、なんかスゴイ!」みたいな(笑)。次を見てみたいと思わせる作品を期待したいです。
 
沢村:学んでしまうと、そういうのが出にくくなる状況だと思うんです。学んだものを壊したものとかを見てみたい。あとは助監督出身がもっと出てきてもいいと思いますね。
 
家田:熊切和嘉監督が出てきたときの勢いが最近はない。富田克也監督はまた違う意味で波だと思うのですけれど。そういった波を起こしてくれる監督が出てきてほしいと思いますね。柴田剛は波になるかなと思いましたが、特異な監督なので(笑)。でも、富田監督がひとつ変えたんじゃないですかね。
 
矢田部:空族みたいな集団で来るのはいいと思いますね。
 
沢村:ひとりふたりではなく、流れで見えてくるといいですよね。映画史に刻める動きみたいなものがお手伝いできたらいいなと思います。
 
矢田部:そろそろ締めということで、今回、応募した人も応募してない人も、来年、応募したいと思っている人もこの記事を公式サイトで見ると思うのですが、若い映画人へのメッセージを頂ければと思います。
 
北條:若い監督は若いプロデューサーや、若い劇場のスタッフと付き合った方がいい。自分たちの世代で時代と環境を変えるしかない。我々みたいなジジイと付き合ったって仕方ないというのが僕の意見です。批評も含めて、自分たちの若い世代で次の時代を構築していった方がいい。あんまり上の世代に引っ張ってもらおうと考えないで。もう、僕らもできないよ。生きていくのがツライんだから(一同爆笑)。
 
家田:面白い作品をどんどん持ってきてほしいというのが基本的にあります。作って、持ってきて、そうやって動ける人がいっぱいいてほしい。空族みたいな集団というのはひとつのやり方としての成功例だと思います。ひとつの作品に関わる人間が多ければ多いほど、お金がないなかでやっていくやり方も見つかると思いますね。
 
沢村:劇場側の人間としては、映画がないと仕事ができないので、ほんとに作品を待つばかりなのですけど、同時に、宣伝とか配給のやり方など厳しいなかでまだまだやっていないことも多くて、劇場の人間も一緒になって考えて、もっと新しいことをやっていかないといけない。
宣伝ひとつ取っても今は変わってきているので、新しいやり方をチャレンジしてやってみるのもいいと思います。僕も何か一緒にやって行けたらといいと思っています。
 

 
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「日本映画・ある視点」部門 座談会

©2012 TIFF

北條誠人(ユーロスペース支配人・[中央])×家田祐明(K’s cinema番組編成・[右])×沢村敏(東京テアトル株式会社 映像事業部 興行部番組編成・[左])
今回ご参加いただいた3名が番組編成をされている映画館へのリンク
ユーロスペース www.eurospace.co.jp
K’s cinema www.ks-cinema.com
テアトルシネマグループ テアトル新宿 www.ttcg.jp/theatre_shinjuku

KEIRIN.JP本映画祭は、競輪の補助を受けて開催します。TIFF History
第24回 東京国際映画祭(2011年度)