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2012.10.22
[イベントレポート]
10/21(日) コンペティション部門 『シージャック』 記者会見のご報告

コンペティション 『シージャック』 記者会見のご報告
日時・場所:
10/21(日) 13:30~ @TIFF movie café
登壇者:
ソーレン・マリン(俳優・左)、トマス・ラドアー(プロデューサー・右)
シージャック

©2012 TIFF

 
本作で海賊と交渉する船舶会社のCEO役を演じるソーレン・マリンさんとプロデューサーのトマス・ラドアーさんにお答えいただきました。
 
Q:海賊事件を扱うというのは誰のアイディアでしょうか?企画が生まれた経緯を教えてください。
 
トマス・ラドアーさん(プロデューサー):トビアス(・リンホルム)監督とは『R』という作品で以前仕事したのですが数年前にカンヌ映画祭で再会した際に、デンマークの船が海賊に襲われるというアイディアを聞かされました。素晴らしい企画だと思い、一緒にやろうと即答しました。彼は非常に才能豊かな監督ですし、出資金集めも脚本製作も1年で完了しました。
シージャック

©2012 TIFF

 
Q:CEOの役作りにあたり、ソーレンさんがどのような準備をしたのか教えていただけますか?
 
ソーレン・マリンさん(俳優):私自身は、ご覧いただいてわかるとおり明らかにCEOには見えませんし、役を演じるにあたり半年近くをリサーチに費やしました。幸運なことに、デンマークのコペンハーゲンを本拠地とする本物の海運会社のCEOと長い期間を一緒に過ごすことができ、オフィスでの話し方、ジャケットを脱いだり着たりする仕草を観察し、話を聞くこともできました。海運業というのは非常に閉ざされた世界で、その実情を知る機会はあまりありません。そして海運業は莫大な額のお金が動く業界です。ですがCEOからは、さまざまな率直な話を聞くことができました。彼自身、数年前に会社所有のデンマークの船舶がソマリア沖で海賊船にシージャックされるという映画同様の体験をしていたのです。その際に彼が交渉人として電話でソマリア人の海賊と交渉したのですが、当時の状況や感情について話を聞き大変インスピレーションを得ることができました。その時の会話の内容は私たちの秘密なのでお教えできませんが、彼との交流なくしてはこの役を演じることができなかったと言えます。
シージャック

©2012 TIFF

 
Q:船上での様子をリアルに描写するためにどのような準備をしたのかお聞かせください。
 
トマス・ラドアーさん:シージャックのドキュメンタリーは数多く見ましたし、デンマーク船のシージャック事件について多くのリサーチを重ねました。またソーレンが話していたCEOのように、本作品を製作するにあたり非常に多くの方の協力を得ることができました。映画でオコナー役を演じている人物は、実生活で海運会社に勤めている本物の交渉人でした。彼の経験を聞いたり実際の交渉の際のやりとりが文書化されたものを見せてもらうことで、シージャックの現場で起こることを再現できたのです。
 
Q:海賊へのインタビュー場面があるシージャックのドキュメンタリーを見たことがありますが、監督は海賊も取材したのですか?
 
トマス・ラドアーさん:していません。この映画では海賊のことではなく、シージャックされたことが人の人生にどのような影響を及ぼすかを描きたかったのです。海賊にインタビューができれば面白かったとは思いますが、彼らの意見を知る必要はなかったと思います。
 
Q:海賊が船に乗りこんでくる瞬間が電話通信の音だけで表現され、映像がないのは予算の都合ですか?それとも観客のイマジネーションを膨らませようという理由でしょうか?
 
トマス・ラドアーさん:簡単にいうと両方です。それは冗談で、脚本の段階で海賊が乗船する場面を映像で見せることはやめようと決めていました。この作品は人間の悲劇を描くヒューマンドラマで、アクション映画ではないからです。
 
Q:画面に「Day120」と出ることで観客はこんなに時間がたっているのかとびっくりしますが、最後の日にも「Day~」と出ることで、まだまだ事件は終わってないのだなと感じます。最後の日にもこの表示を出したことの意図はなんでしょうか?
 
トマス・ラドアーさん:日にち表記は時間の経過を観客に理解してもらうのに効果的と考えたからです。また最後の日にもこの表記を入れたのは、事件には終わりがないということを表現したかったから。シージャックは悲劇なのです。シージャックを経験した者は精神的・肉体的な傷を負い、その傷はずっと癒されることがないのです。
 
Q:俳優ではない一般人をキャスティングすることについて、また一般人と演技をする際の注意点を教えてください。
 
ソーレン・マリンさん:一般人との演技はうまくいくこともあるし、うまくいかないこともあります。それはプロの俳優が相手でも起こりうることですが。この映画に関していうと、オコナー役の人物は本物の交渉人です。その仕事ぶりがあまりにも優れていたので監督のトビアスが映画に出演させようと決めたのですが、彼の演技は素晴らしかったですね。結論からいうと、この映画は一般人を使うことが大成功した例だと思います。
 
トマス・ラドアーさん:トビアス(・リンホルム)と一緒に仕事をした『R』という映画では、出演者は一人を除き全員が本物の服役者でしたし、これは彼の映画作りの手法なのだと思います。私はトビアスを大変信頼しているので彼の判断に任せました。
 
シージャック

©2012 TIFF

 
 
コンペティション
シージャック
シージャック

© Nordisk Film 2012

監督/脚本:
トビアス・リンホルム
プロデューサー:
ルネ・エズラ
トマス・ラドアー

キャスト:
ヨハン・フィリップ・アスベック
ソーレン・マリン
ダール・サリム

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