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2012.10.23
[イベントレポート]
10/21(日)コンペティション『イエロー』:Q&A

10/21(日)、コンペティション出品作品『イエロー』の上映後、ニック・カサヴェテス監督と主演で監督と共同で脚本も執筆したヘザー・ウォールクィストさんが登壇。Q&Aを行いました。
イエロー

©2012 TIFF

 
矢田部プログラミング・ディレクター(以下、矢田部):おふたりをお迎えできて大変光栄です。映画祭にご参加くださり、ありがとうございます。一言ずつご挨拶をお願いできますでしょうか。
 
ニック・カサヴェテス監督(以下、監督):こんなに多くの方々に映画を観ていただけて、嬉しく思います。ありがとうございます。日本には多くの映画製作者がいて、素晴らしい映画の歴史があります。今回、この場に立てたことを大変光栄に思います。
 
ヘザー・ウォールクィスト(以下、ウォールクィスト):招待していただいて大変光栄です。大変な時期もありましたが、3年かけてこの映画を完成できたことを嬉しく思います。どう表現すればよいか分かりませんが、本当にありがとうございます。
イエロー

©2012 TIFF

 
矢田部:共同で脚本を執筆されていますが、この全く独特でオリジナリティー溢れる物語を一体どうやって書かれたのか、お聞かせください。
 
ウォールクィスト:いつもキャラクターの構想から始まるのですが、こういう形で女性のことを描けたらいいんじゃないか、という話になったんです。主人公の女性は色々な痛みを感じているんですが、それを言い訳せずに受け止めています。そして実際に脚本を書き始めてみて、監督の頭の中でこのようなストーリーに仕上がったという感じです。
 
監督:日本でどうかは分かりませんが、最近アメリカで上映される作品はストーリーや構成がどれも似たり寄ったりな印象があります。ヘザーと私はいつも率直に意見を交換するんですが、最近の作品は本当の日常生活や女性の姿を正確に反映していないと話していました。ここ10年くらいでアメリカの女性は大きく変わってきて、とてもタフで正直になりましたし、「古き良き時代の女性」を演じなくなりました。しかし最近の作品では、女性は品行方正な存在として描かれていて、それは現実の女性を反映していないように思います。現実の女性たちは、この映画で描かれているように色々な問題を抱えています。また、やりたいことを率直にやりますし、付き合いたい人と付き合います。何か問題があったときでも、自分で解決策を選んで人生を変えることができます。そういった真の女性の姿を描きたかったんです。
イエロー

©2012 TIFF

 
矢田部:ありがとうございます。それでは、皆様からのご質問を受けたいと思います。
 
Q:音楽が主人公の心情を表現しているように感じる場面があったのですが、音楽の使い方に何か意図があれば教えていただけますでしょうか。
 
監督:映画を観客の方がご覧になると、製作者が意図しているとおりに受け取ってくれることもあれば、意図していないことを感じる場合もあると思います。
この映画は女性のシリアスな問題を扱っているので、静かな形で映画をスタートさせたいと思いました。ただ、ドラッグや人生の問題について何か代償があるわけではありません。主人公は基本的にはハッピーなキャラクターなのですが、静かな形で彼女の人生や問題に注目することで、深刻さを強調したかったんです。
 
Q:映画の中で印象に残ったのは、急に滑稽なシーンに切り替えられたところだったのですが、それは脚本を書く上でどのような話し合いがあって作られたのでしょうか。
 
ウォールクィスト:ほとんどのシーンはメアリの頭の中を描いているもので、周囲のことで一杯一杯になって妄想の世界に入り、現実を停止させてしまう想像の世界を描いています。ニックの方から「こんなクレージーなアイデアがあるけれど、どう思う?」と持ちかけてきたので、基本的にはニックのアイデアから生まれたものです。
 
監督:普通ストーリーというのは、こうした事が起こり、次にこうした事が起こってというふうに直線的に進んでいくと思われますが、そこから少し逸脱して、どれぐらい逸れられるかということを試しています。観客としては、逸脱したところを見ることによって彼女と共感ができるようになるか、場合によっては何でこんなものを見ているんだと思われるかもしれません。できるだけ、その可能性を追求してみたかったのです。
 
Q:変わった母親たちが出てきますが、母親像の描き方がこの作品のキーポイントだったのでしょうか?また、監督のお母さんのジーナ・ローランズさんは、どのようなお母さんでしたか?
 
監督:実はヘザーのお母さんも私の母も今回の作品に出演しています。母は素晴らしい女性であり、素晴らしい女優だと思っています。今回、彼女は怒ってばかりの役なので、彼女にとっては嬉しくなかったようです。今回のポイントは、女性は強いんだということです。自分に言い訳をしないし、自分の意見を持っています。私の娘も出演しているのですが、家族、親族で作ったような作品です。
先ほど舞台裏で話していたのですが、インディ系のシネマはこういう違ったものでいいのではないかと思っています。もちろん大規模なスタジオ型の映画をご覧になるのもいいと思いますが、こういう人もいるんだ、こういう違った考え方をする人もいるんだ、ということを見ていただいて、自分もストーリーテラーとしてこんなことを言っても大丈夫だったんだと思えるような、そんな賭けをしてこうした結果が出て嬉しく思います。最初に自分の作品を撮った時は、完璧なものを作り、ミスはゼロにしたいと考えていたのですが、年を重ねるにつれていろいろ考え方も変わってきて、ミスをしてもいいんだなと思うようになり、自分の頭の中にあることを誰に何と言われようとも思った通りに言えるのがいいなと思っています。こうして見に来てくださる方々も作る人も、みんなフィルムコミュニティの一員なので、本当に私自身これだけたくさんの方に来ていただいてとても嬉しく思います。ありがとうございます。

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