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2012.10.27
[イベントレポート]
10/23(火)アジアの風-インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト『空を飛びたい盲目のブタ』:番外編トークショー

10/23(火)にアジアの風部門『空を飛びたい盲目のブタ』の上映後、Q&Aが行われました。
しかし、エドウィン監督がQ&Aの時間に間に合わないというハプニングが発生したため、急遽石坂健治PDと通訳の松下由美さんによるトークショーが行われ、監督の到着を待ってのQ&Aとなりました。
インドネシア映画界の現状にも触れた、興味深い内容のトークショーとなりましたので掲載いたします!
 
空を飛びたい盲目のブタ

©2012 TIFF

 
石坂PD:エドウィン監督は、もともと短編の作品をたくさん製作して評価を受けていた監督で、今作が初の長編監督作品です。この作品は4年前に製作されたもので、ロッテルダムで批評家賞を取りました。この作品はナラティブな映画ではないので、「これはどういう意味ですか」というような質問が通用しない作品だと思います。ここで監督をお呼びしたいところなのですが、実はまだ監督が青山一丁目にいるということで。今の映画と同じでシュールな感じになっています。(笑)この作品は日本でも1度大阪で上映されましたが、今回インドネシア・エクスプレスということで、初めて東京でも上映されることになりました。長編の第2作目が今回TIFFで上映される『動物園からのポストカード』です。
 
実は、今回通訳を担当してくださっている松下由美さんは、東南アジアのクィア映画、ゲイ・レズビアン映画といえば一番近いのでしょうか、セクシュアル・マイノリティージャンルの評論家でいらっしゃいます。私と松下さんは他の方々と『アジア映画の森』という本を最近出版したのですが、松下さんは「東南アジア クィア論」という長い論文を書いていて、実はこの作品も少し登場するのです。
 
松下さん:インドネシアのジョコ・アンワル監督は第18回TIFFでも『ジョニの約束』などが上映されましたが。インドネシアでゲイ・レズビアン映画祭もあって盛り上がっているわけで、そのマイノリティの実情は華僑のものと通じるものがあります。エドウィン監督の作品には中華系インドネシア人のような様々な種類のマイノリティに光を当てたいという思いが込められていて、この作品もそのひとつです。
 
石坂PD:この作品はヨーロッパのサーキットを先に周って、大阪を含めたアジアの各都市で上映された後にインドネシア国内で公開され、今回改めて東京で上映することになりました。ゲイセックスのシーンでは輸出の許可が出るかインドネシアでも物議を醸したそうです。実際、そのようなシーンを描いたインドネシアの作品というのはあまり観たことがないですよね。
 
松下さん:今回こうしてガリン・ヌグロホさん、リリ・リザさん、エドウィンさんに来ていただきましたが、石坂さんはどのような意図でこの3人を選んだのですか?
 
石坂PD:1993年にインドネシア映画祭というのが1度だけ日本で開催されたことがあります。ちょうどその時期はスハルト政権の末期で、流通を含めて大統領の家族が全てを握っていて、映画が滅びるのではないかという最悪の時期でした。大統領の一族が98年にその体制が壊れてようやく流通が良くなって、今では1年に100本近くの映画が作られています。ひとつの国の映画が1年に100本作られるようになると、だいぶバラエティに富んでくるものなのです。2012年10月27日から公開される『ザ・レイド』という映画も、インドネシアのという伝統的なシラットという武術を取り入れたアクション映画になっていて、このようなタイプの作品も生まれるようになってきているわけです。

それで、その93年に来日されたのが、ガリン・ヌグロホさんでした。ヌグロホさんが61年生まれで、リリ・リザさんは70年、エドウィンさんは78年と世代も違うし作風も違うので、その3人をぶつけてみようと思ったわけです。

僕の印象として、アジアの風というのは東南アジアの特集をよくやってきたなと。フィリピン2回、マレーシア、シンガポール、タイ映画など、様々な国の特集をしてきました。東南アジアの映画を10年単位くらいで見ると、連携している場合としていない場合がありますが、多発的にいろんな動きがあったのだなということがわかりますね。インドネシアもいよいよ特集できる感じになってきたなという感じがします。
 

松下さんは東南アジアにクィア映画が多いという観点から研究をされていますが、一方で東南アジアにはホラー映画が多いという特徴もあります。その理由としては色々な説がありますが、土着の宗教に外来の仏教やイスラム教など外部からの宗教が侵入してきて土着の神様がざわめき出すという、なんていう説もありますね。クィア映画が多い理由は何か考えられますか?
 
松下さん:血液型と同じように、性の嗜好は敢えて取りあげるものではないというのが私の意見です。個性のひとつだと。台湾や香港、韓国にはそれを題材にした作品が多いのですが、東南アジアは映画でその題材が描かれることが少ないので、注目してみようと思いました。そう思って観ているうちに、フィリピン、タイ、シンガポールなどはあまりにもそういう映画が多いと気づきました。特に映画監督のような表現の道に進む人にゲイやレズビアンの人が多いのは、高い感性があるけどもそれを活かせず、はけ口を探した人々が表現の分野に集まった結果だと思います。だからここまで密度が高いのかなぁ、と。
 
<ここでエドウィン監督が汗だくで登場し、エドウィン監督Q&Aが開始となりました。>
 
エドウィン監督Q&Aはコチラ

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