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2012.10.24
[イベントレポート]
「400年前の史実が現代の日本を勇気づける」-10/23(火)特別招待作品『のぼうの城』:舞台挨拶

©2012 TIFF

 『のぼうの城』の上映は、11月3日の公開を間近に控えてのアジアンプレミアとなりました。この日のチケットは“瞬殺”でソールドアウトとなり、人気と注目度の高さがうかがえます。豪華ゲストの登壇を前にざわつく会場に駆け込んできたのは、「忍城おもてなし甲冑隊」が扮する戦国時代の武士。客席の中央左右に走る通路に仁王立ちし、手にしている巻物を広げるとそこには「W兜監督」の文字が。すると、タキシードに兜を合わせた犬童一心&樋口真嗣W監督が勇壮に入場してきます。その後も同様の演出で、和服姿のキャストが芦田愛菜ちゃん、上地雄輔さん、榮倉奈々さん、そして野村萬斎さんの順番で入場。ゲストが通路に一列に整列したタイミングで場内には金テープが降り注ぎ、観客のボルテージが一気に高まります。
 

©2012 TIFF

 改めてスクリーンの前に移動したゲストはまず、観客に感謝の思いを述べました。「8年前からこの映画を作ろうと思い、萬斎さんには7年くらいつきあっていただいています。去年映画が完成しました。自分が作った映画なんですけどすごく面白いので(笑)、もう5回くらい観ているんです。早くみなさんに観て欲しかったので、今日という日が迎えられて本当に嬉しいです」と犬童監督。

 樋口監督は、まるでドレスを着た女の子のように膝をちょっと曲げて可愛らしく挨拶をします。それには「兜が重くて、首が限界に達しています。お辞儀をしたいんですけど、その後、頭を戻すともの凄く痛いんですね。非常に尊大な態度に見えるかもしれません。申し訳ありません」という理由がありました。続けて「ここだけの話、今日は、数少ないフィルムでの上映になります。今、映画というのは、デジタルデータで上映することが多くなっていて、フィルムでの上映はかなり貴重な体験になると思います。しかも、これだけ大きな劇場でのフィルム上映は滅多にないと思うので、みなさん自慢していただいて結構だと思います」と、この日がスペシャルな機会であることを伝えます。すると犬童監督も「フィルムで観て欲しくて作った映画なので、今日はその方式で観ていただけることが嬉しいです」と言葉を重ねます。
 

©2012 TIFF

 主人公の忍城城主・成田長親、別名“のぼう様”を演じる野村萬斎さんは「監督やプロデューサーからお話をいただいたのが7年前でした。そのとき、私はまだ30代でした。映画を撮影したのが40代前半で、公開されるときには40代後半に入っているという。それだけ寝かせたことで、芳醇な香りわきたつ作品になっていると思います」と作品と関わった長い年月を振り返ります。

 甲斐姫役の榮倉奈々さんが「この映画は戦闘シーンも迫力“満載”で……」と言うと、野村“萬斎”さんがおどけた表情をして客席が笑いに包まれます。「絶対に映画館で観るべき映画だと思います。しかもフィルム上映という特別な日で、みなさんがとても羨ましいです!」と羨望のコメント。石田三成役の上地雄輔さんは「東京国際映画祭ということで、世界中の人が観に来てくれてうれしいです」と素直な一言。そして農民の子供・ちどり役の芦田愛菜ちゃんが「私はこの映画に出演してから歴史に興味をもちました。なので、私と同じくらいの年の人にもこの映画を観ていただいて、ちょっと難しいかもしれないけれど、歴史に興味をもっていただければと思います。今日はよろしくお願いします!」とハキハキとした挨拶をすると、会場は自然と大きな拍手と笑顔に包まれました。登壇したゲストもみんな表情がとろけそう。
 

©2012 TIFF

 続いてはQ&Aタイム。『のぼうの城』のキャッチコピー〈大逆転に驚き、笑え〉にちなみ、「撮影中に驚いたこと、そして笑ってしまったことはなんですか?」という質問に1人ずつ答えます。

 犬童監督は「萬斎さんの演技にはしょっちゅう驚かされました。あとは水攻めシーンのセットですね。CGを使いたくなかったので、北海道にコンピュータ制御で水を流す巨大装置を作ったんです。事前に動作チェックをしたところ、予想以上のものすごい水の勢いにみんながびしょびしょになったときは、本当に驚きました」と作品のスケール感の期待を煽ります。

 樋口監督は「合戦の後の場面は、村や田畑がめちゃめちゃになっているんですけど、カメラから遠く離れた場所がそうでもなかったんですね。時間がなかったので(笑)。でも、後でなんとかする方法は10くらいあるので大丈夫だと思っていると、犬童さんがユンボというパワーショベルの大きなやつに箱乗りして、運転手に『あそこを壊すぞ!』と指示しながらメチャメチャにしていくんですよ。あの姿に驚きました」と犬童監督に関する意外なエピソードを暴露。またしても膝をちょこんと曲げている姿がお茶目です。

 「驚いたのは、僕の演技を両監督に喜んでいただけたことですね。カットがかかるごとに笑っていただけたので(笑)。また、休憩中ずーーーっと、佐藤浩市さんが犬童監督の、ぐっさん(山口智充さん)が樋口監督の物真似をしていたのが本当におかしかったです。それだけはご報告させていただきます」と野村監督。場内からは「観たい!」という声が上がりました。

 榮倉さんが「北海道に建てたオープンセットが……」と話し始めると、隣の上地さんに異変が起こります。榮倉さんが目ざとく気付き、「あ、(同じエピソードを)言おうと思ってましたね。お先に(笑)」と話し続ける場面では大爆笑が巻き起こりました。「東京ドーム20個分くらいあって、映画の大きさを実感しました」と話している間中、上地さんは新たなエピソードを思案していました。そして披露したエピソードはなんと、「監督2人がすごく仲良くて、最初、“こっち”なのかなって……と思うくらいでした」という剛速球! 樋口監督は上地さんが話している間中、兜が落ちないように工夫しながら硬直した身体を左右に揺らして必死に否定していました。
 

©2012 TIFF

 そして愛菜ちゃんは、「農民の子の役なので、濃いファンデーションを体中にずっと塗ってたんですけど、自分の身体の色が濃くなっていって、目だけがぎょろぎょろしていくのが面白かったです!」と可愛らしいエピソードを披露しました。

 ここで、MCからスペシャルアトラクションのアナウンスが。映画では、野村萬斎さんが演じるのぼう様が忍城の大将で、上地さんが演じる石田三成が豊臣軍の大将です。東京国際映画祭というインターナショナルな映画祭で二人の大将が揃ったことで、両雄による外国語でのスピーチ対決が行われました。

 モントリオール国際映画祭に登壇した上地さんは現地の公用語でもあるフランス語で、萬斎さんは英語で、映画に関するスピーチを行いました。左腕に事前に書いてきた文章を訥々と読み上げる上地さんに対し、ロンドン留学の経験もある萬斎さんは朗々としたブリティッシュアクセントを諳んじ、共演者を褒め称えます。結果、審査員の愛菜ちゃんと榮倉さんは共に萬斎さんに投票し、萬斎さんがスピーチ大将となりました。
 

©2012 TIFF

 忍城のあった埼玉県行田市の「忍城おもてなし甲冑隊」のみなさんのサポートを受けての写真撮影タイムでは、愛菜ちゃんをさりげなく抱き上げる萬斎さんの姿も観られました。盛りだくさんの舞台挨拶を締めるのも、総大将の野村萬斎さん。「大きなスケールの時代劇ですが、現代劇にも通じる生き生きとしたキャラクターからは、人物が鮮やかに浮き彫りになります。2人の監督の渾身の作品で、楽しく演技させていただきました。世界に通用する作品に出演できたことを誇りに思います。この映画は400年前の合戦を描いていますが、日本の現在の惨状にも重なる部分があります。この映画を通して我々は、今こそ踏ん張らないといけないということが伝わったらいいなと思います。ぜひとも、エンドロールまでご覧ください」と、日本に生きる1人の人間、そして表現者として、力強いメッセージを贈ってくれました。

KEIRIN.JP本映画祭は、競輪の補助を受けて開催します。TIFF History
第24回 東京国際映画祭(2011年度)