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2012.10.31
[イベントレポート]
「動物の視点を大切にしました」―10/25(木)natural TIFF『どうぶつの権利』:Q&A

10/25(木) natural TIFF出品作品『どうぶつの権利』の上映後、ヤン・ヴァン・アイケン監督によるQ&Aが行われました。
どうぶつの権利

©2012 TIFF

 

司会:まず監督からひとことお願いします。
 
ヤン・ヴァン・アイケン監督(以下:監督):みなさんいらしてくださってありがとうございます。私のアジアプレミアになりますので、作品を見せられたことを大変嬉しく思っております。
 
司会:まずこの作品は動物の目線を最も大事にしたという話なのですが、まずはそこから監督に伺いたいと思います。
 
監督:この作品では動物の視点を大切にしました。動物の顔というものを見せたいなと思っておりました。オランダでは家畜がたくさんいまして、人口が6000万人に対して鳥は一億羽、豚は1200万頭いるんです。でも家畜を目にすることはほとんどないんです。いつも家畜は暗い小屋にいて、なぜ私たちは見ることがないのか、なぜ家畜を隠しているのかということを考えてこの作品の原題に『Facing Animals』(動物の顔)をタイトルに組み入れました。
 
司会:日本でもそうですが、食肉加工業者はなかなか撮影許可がおりないんですね。監督はいまこの作品がデビュー作で、本業は写真家です。写真家として活動していて、一度その家畜の写真集を撮って作ってから、長い時間をかけ信頼関係を築きあげ、その後に撮影に臨まれたそうです。そのあたりの経緯についても伺いたいと思います。
 
監督:今回は写真集を先に撮って出し、その後この映画を撮りました。畜産業界に入るのはとても大変で、信頼関係を築き維持して撮影に至るまでに3年かかりました。農家の皆さんはマイナスなイメージを非常に恐れていました。私はオープンに全てをお話しして映画を撮らせていただきました。
 
司会:それでは客席の皆さんから質問を受け付けたいと思います。
 
Q:対比がとても面白かったです。犬は死んでしまって、お棺の中に入れて葬られるところは映したのに、食べられてしまう豚や鳥は殺されるところは映っていませんでした。それにはどのようなメッセージが込められていたんでしょうか。
 
監督:映画の冒頭シーンでひよこが殺されるところは映っているのですが、私は動物の生活の日々を描いていきたくて、殺されていく現場というよりも動物がどのような日々を送っているのかお見せしたくてこの映画を撮りました。
どうぶつの権利

©2012 TIFF

 
Q:この作品にはナレーションがついてないのですが、同様にナレーションをつけずに作品を撮っていて、家畜を題材にしている作品のドキュメンタリー作家、フレデリック・ワイズマンの影響を受けているのでしょうか。
 
監督:非常に興味深い作品を撮っている監督だということは存じておりますが、残念ながら見たことはありません。
 
Q:上映時間30分の作品ですが、10分くらいに感じられるくらいに見入ってしまいました。この30分という短さに何か意味があるのでしょうか。
 
監督:上映時間30分の長さを10分に感じられたということはとっても嬉しく思います。私は個人的にはドキュメンタリーの尺は長い必要はないと思うんですね。もちろんたくさん映像は撮りましたので、2時間のドキュメンタリーを作ることも出来ました。でも今回はお試しということもありましたので、私としては自然な長さになったんじゃないかなと思います。編集の段階で何分にしようか非常に迷いましたし、どんな映像を見せるか見せないか、どうやってコントラストを出すべきか非常に迷いました。けれどもシーンごとにちがう側面をお見せできましたので、私としてはちょうどいい長さになったんじゃないかなと思っております。
 
Q:豚が手術されているシーンがあったのですが、あの豚はどういう種類の豚なのでしょうか。
 
監督:あれは動物実験をしているシーンで、バイパス手術をしていました。豚の心臓と肺というのは、80%から90%くらい人間と同じなので、豚の実験で成功すれば人間にも応用できてお腹や胸などを切らずに、3つの小さな穴でバイパス手術ができるようになるのではないかといわれています。
 
Q:私は初めてお肉の加工シーンをこの作品で初めて見ました。とても興味深いシーンだと思いました。この作品を作るために3年かかったとおっしゃっていましたが、そこまでして食用の動物を撮影したいという特別な思いは何だったのでしょうか。
 
監督:まず初めは、写真集のために家畜を撮ったんですけども、ちょうどその時に動物の病気(豚インフルエンザ、鳥インフルエンザ、狂牛病など)が流行った時だったんです。大量の処分された動物を映像で見るようになり、今までにこんなに動物がたくさんいたのに目にしていなかったことに非常に興味をひかれ、この映画を撮りたいなと思いました。
 
Q:最初のひよこが殺されているシーンが非常に衝撃的だったのですが、監督はあのような動物たちを撮っていって動物に対する考え方や価値観に変化はあったのでしょうか。
 
監督:この映画を撮影することで、全体のシステムについて非常に学びました。この鳥も養鶏場を回ってワクチン注射をバシバシ打たれていたりする、そういうものを見て考え方が変わってきました。ベジタリアンになりましたか?とよく聞かれますが、それはなっていません。でもオーガニックのお肉しか食べなくなったりとか、少しずつ私の中でも変化が起きていきました。
 
どうぶつの権利
 

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