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2012.10.30
[イベントレポート]
「これは差し迫った問題なので、どうしても描かないといけないものだと思いました。」―10/25(木)natural TIFF『ゴミ地球の代償』Q&A

10/25(木)natural TIFF部門『ゴミ地球の代償』上映後、アソシエイト・プロデューサーのタビサ・トラウトンさんによるQ&Aが行われました。
ゴミ地球の代償

©2012 TIFF

 

司会:なんと恐ろしい映画でしょうか。

 

タビサ・トラウトン(以下、トラウトン):これは差し迫った問題なので、どうしても描かないといけないものだと思いました。

 

司会:俳優のジェレミー・アイアンズさんがエグゼクティブ・ディレクターを務め、ご自身で出演までされています。ドキュメンタリーでありながら、ジェレミー・アイアンズさん主演のコメディ・ディテクティブ映画のような気もします。

 

トラウトン:こういうようなテーマでも所々、ユーモアを散りばめながら描く形で作りました。
 
司会:ジェレミーさんは作品にどのような関わり方をしていたのでしょうか。

 

トラウトン:ジェレミーさんは、昔から資源やゴミ問題など地球環境の問題に非常に関心があった方で、この企画を聞いたとき、最初からやりたいと手を挙げてくださいました。この映画に出演していただいたことは、勇気があることだと思いますし、ありがたいと思っています。どうしても目を背けたくなるような現状を描く映画ですので、ジェレミーさんのような方に案内人として誘導してもらいながら見せると、見やすい映画になるかなと思ったのでそうしました。

 

司会:プロデューサーの立場からみて、なかなか撮影に協力的でない部分というのもたくさんあったと思います。ジャレミーさんが登場することによって、より被写体に近づきやすくなったということはあったんでしょうか。

 

トラウトン:彼は非常に正直で心温かい方なので、人の話を聞き出すのが非常に上手なんですね。その意味では製作に関わっていただいて救われました。かつ、インタビューを受けている皆さんもやはり語らずにはいられない、という部分もあったので、そういった方々の話をより上手に引き出してくれたのでありがたいと思っています。

 

司会:環境の非常に危険な部分を撮影するのは大変だと思いますが、プロデューサーからみて、撮影上の困難というのはどういうところにあったんのでしょうか。

 

トラウトン:特に埋立地での撮影となると非常に難しく、私有地だと撮影許可がなかなか下りません。カメラを持って立ち入ったところは全て公有地なので、なんとかうまく撮ることができました。

 

Q:映画を製作していく過程の中で、インタビューができなかったり、配給していく段階でなかなか公開できなかったり、映画館で上映してくれなかったり、そういった抵抗はあったのでしょうか。

 

トラウトン:ジャーナリストとしての観点からみましても、こういう話を語っているのは1、2人であっても大勢の声を代弁しているものですので、そんなに抵抗はありませんでした。ただ、会社に取材を申し込んでもなかなか返答をもらえなかったりと、ちょっとした抵抗はありましたが、そういった部分はいろんな資料を集めてリサーチしたのでなんとかなりました。

公開にあたっての抵抗というのは意外となく、わりと温かく迎え入れてもらっています。この映画はニュ-ヨークで12月に公開されます。そろそろ、こういうテーマの映画を公開してみんなに見てもらう時期が来ているのではないかと思います。

 

Q:日本は世界で最も焼却炉が多いということで、日本へのメッセージや公開の予定はあるのでしょうか?

 

トラウトン:日本で公開するかはまずは映画祭での反応を見てみようと思います。そして私はこの映画を引っさげては来たんですが、この作品自体が雄弁に語ってくれるだろうと思っているので、あまり余計なことは言わないでおこうと思っています。焼却炉の問題に関しては、非常にダイオキシンを排出するということで問題になっています。もちろん、ダイオキシンが排出されるのは焼却炉からだけではないんですが、ひとつその警鐘をならすとすれば、焼却炉のモニタリングは実は継続的になされることは一切ないんです。例えば、イギリスのある焼却炉でモニタリングされるのは、1回2時間、年に2回だけなんですね。

 

Q:質問ではなく、感想になります。現代は資本主義だから仕方がないのかもしれませんが、スーパーにはきれいなパッケージが並んでいますし、エコだと称してレフィルを本体の器に入れ替えるものなどが出回っています。私も主婦でゴミの分別をしていますが、その中でプラスチック製品が一番多いです。昔の日本では、お醤油とかお酒とか、味噌とかみんな容器を持って買いにいきました。包装するものも紙でした。ですから、現在は確かに便利ですが、そういう風に昔に戻ればいいなと常々思っておりました。今日こういう映画を拝見させていただいて、私たちの親の世代の方が自然を顧みて生活していたということで、すごく良かったんじゃないかなと思います。
実は今日、私も飲み物を買ってしまって、途中でこれどうしようと思いました。いつもだったら、マイボトルを持って歩き、エコバッグなども極力持っていきますが、ついついレジ袋をいただいたりすることもありました。でも、これからは極限まで抑えて、極力ゴミを少なくするように、個人的な小さな努力をしていきたいと思います。

映画の方は内容的には目を覆うシーンもたくさんあり、すごく悲しいというか、それが現実だから仕方がないかもしれませんが、少しでもなくなっていけば将来的にいいなと思って、とてもいい映画を拝見させていただいたと思って感動しております。日本でもぜひぜひ、一般公開をしていただけるようにご努力よろしくお願いいたします。(会場、大拍手)

 

トラウトン:すばらしい感想ありがとうございます。おっしゃる通り、これは日本だけの問題ではもちろんないんです。イギリスでもフランスでも同じような問題が起きていまして、同じような声があがっています。つまり、お客様がおっしゃったように100年前のみなさんの方が、地球にやさしい理にかなった生活をしていたんだ。そして、その子どもとさらには孫たちが健康的な生活を送れるような、そういう生活をしていたんだと。しかしそれと比較して今、どうかというと、やり方を変えないと危険で、そういうところまで来ているんだと。実際にEUのメンバーであるチェコスロバキアの代表は、プラスチックの製造業者、プラスチック産業に、製造の仕方を変えなさい、でないと近々壁にぶちあたりますよ、という警鐘を鳴らしています。

またこの映画に出演していただいている科学者のリチャード・トンプソンさんも、プラスチック製品はおびただしい量が出ているが、必ずリサイクルできるようなものにしましょう、という風に同じく警鐘を鳴らしています。世界中でプラスチック商品を出すにしても、その行く末、最後どうなっていくのかというのを意識したうえで製造業者も製造していかないと、これはまずいということになっております。本当に100年前を見習わなくてはいけないと思っています。これはまさに個人が声を上げて、その声がつながり、国が動き出したということで、そして全世界が動き出す、というムーブメントができるといいなと思いながら作っておりました。

 

司会:スーパーに行きますと、ヴァンゲリスの曲が耳に残っておりまして、怖くてプラスチック袋がもらえないんですよ。そのくらいの影響力があります。

 

トラウトン:音楽に関してはお詫び申し上げます(笑)。この映画で言いたいのは、リサイクルとか、再利用とか、そこに留まらないでおきましょうということです。要は、ゴミゼロが大事なんです。今、みなさんにご覧いただいたようにサンフランシスコではゴミゼロが今は75%、だんだんと100%に近づいてきているという動きが出てきていますし、世界各国でも生産から減らそうという動きが出てきています。再利用できますよ、と言いながらプラスチック袋を手渡されて、実は再利用できなかったということが非常に多いので、産業界も含めてやり方を変えなければならないと思っているんです。
ゴミ地球の代償

©2012 TIFF

 
ゴミ地球の代償

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