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2012.11.01
[イベントレポート]
「最近は俳優さんもものすごくいい体をしているので、機会があれば見せびらかそうとしている」―10/26(金)アジアの風『火の道』:Q&A

10/26(金)アジアの風-中東パノラマ部門『火の道』の上映後、カラン・マルホートラー監督が登壇し、Q&Aが行われました。
火の道

©2012 TIFF

 

司会:まずはひとことご挨拶お願いします。

 

カラン・マルホートラー監督(以下、監督):本日はお越しいただきありがとうございます。大変長い作品にもかかわらず、最後までお付き合いいただきありがとうございました。こんなに大きなスクリーンで上映させていただき大変うれしいです。通常インドでは前半後半に分けて間に休憩を挟んでいますが、今回は幸運にも、といえば良いでしょうか、休憩無しで全編をご覧いただきました。ありがとうございました。

 

司会:この作品は1990年に作られた映画のリメイクですが、新しく作り直そうと思った理由はなんだったのでしょうか?

 

監督:ビジネス的な理由でというよりも、純粋に感情的な理由でリメイクをしたいという風に考えておりました。前作のプロデューサーというのが今回のプロデューサーのお父様で、残念ながら前作はビジネス的にはあまり好調ではなかったんです。最初は大変期待も大きく、シネマ業界からもかなり高い評価を受けていて大ヒットになるだろうと言われていたんですが、なぜか興行的に失敗してしまったんです。そのことに息子である今回のプロデューサーが大変心を痛めていまして、できればもう1度作りたいと考えられていて、それで私が今回、監督に選んでいただいたということです。

 

Q:今日、上映されたものは、本国で上映されているものと同じでしょうか。または、いわゆるインターナショナルバージョンでしょうか。
 

監督:今、この作品は上映したバージョンしかないのですが、インドの映画は長いので、国外で配給を行う際は通常、編集をしてもっと短くしています。そして、配給される国によってお客様の反応やどのくらい気長に見ていただけるのかも違うので、それぞれの国に合わせて編集を行っていきます。インドでは映画を見に行くというのは家族のピクニックのようなもので、前半を見て15分の休憩の間に食事を楽しんで、後半を見てその後、この映画はどうだったというのを2時間くらい話す、というようにな感じで楽しみます。映画の楽しみ方は国によって違っていて、そういう見方の違いというのを考慮に入れて、海外市場で展開する際には長さの調整をしています。

 

司会:非常にドロドロとした復讐劇の中に華やかなダンスシーンがありますが、意外と違和感がありません。

 

監督:この作品はヘビーな内容ですが、どういう内容であったとしても、基本的にインド人というのはなんでもかんでもお祝いをする人種なのです。私たちは作品に歌が入っていないと完成していないと考えています。

 

司会:ダンスや歌は、どのくらい時間をかけて練習しているのでしょうか?

 

監督:今回の作品の歌については、10日間ほどかけて撮影をしています。この作品では歌が目立ちすぎないようにと考えていて、ビジュアルでもシームレスな形で溶け込むようにできたのはラッキーだったと思います。なぜかというと、通常、ほとんどの作品で歌やダンスは個別に撮影されるものですが、今回はストーリーの中の一部としてダンスシーン、歌のシーンを一緒に撮りました。ですので、歌、ダンスというのがストーリーのプロットを補完するような形で自然に溶け込むことができたのではないかと思っております。

本来ある休憩の後に入っている悪役とヒーローのダンスがあります。そこに出てくる女性は、2週間くらい自分でリハーサルをやって本番に来たのですが、かなりテンポも動きも速いので大変だったと思います。

1日16時間くらいかけて撮影して、それを何日も繰り返してパーフェクトなものができあがるまで続けていきます。そのようなプロセスを経て、やっとこのようにきれいになじむようになりました。
火の道

©2012 TIFF

 

Q:昔の作品のリメイクとのことですが、映画を作るにあたり、前作から変えた点や意識して使った点などを教えてください。

 

監督:基本的にオリジナル作品からリメイクを作るときに、どこか悪いところがあったからもっと良くしようとか、改定しようというものではなかったんです。私はもともとオリジナルの作品のファンですし、興業的には良くありませんでしたが基本的に内容は良かったと思うので、前の作品で気に入っているところはすべて尊重しようと思いました。ですので、ストーリーそのものには一切変更を加えていません。

ただ、スト-リーを取り巻く世界はかなり変わっています。前作ではヴィジャイを演じた俳優は大スターで40歳というキャラクターを演じています。12歳でお父さんを失って、それから最終的には45歳までかかってやっとリベンジするのですが、今、2012年という時代を考えると、自分がリベンジすることを考えてみても、35年も待つというのはちょっと待ちすぎだと思いました。そこで、まずヴィジャイの役柄をもっと若く設定しました。その方が監督として観客としてももっと親近感を得られるのではと思ったからです。若く設定したことにより、彼を取り巻く世界というのも全部変わっていて、友人も恋人も彼の動き方というのも全部変わっています。

そしてもう1つオリジナルで違和感があったのは、もともとの村を、そして島を出て離れたことで、少しリベンジということが薄まった印象を受けたことです。いかに大スターのヴィジャイが素晴らしいかばかりが強調されて、リベンジの部分が薄れてしまったと思ったので、今回はヴィジャイが出てきたらリベンジと覚えていてほしかったんです。

ヴィジャイが何をしていてもリベンジと思ってもらいかったので、ストーリー以外の部分は大幅に変わっています。他にも、前作でコミック的なキャラクターがいたんですが、今回の作品はリベンジにフォーカスしているので、そのキャラクターは外しています。

 

Q:悪役の方がすごくインパクトがあったのですが、監督の意向でああいう姿にしたのか、または彼が自発的にそういう姿を見せようとしたのでしょうか。

 

監督:このカーンチャー役の俳優(サンジャイ・ダット)さんですが、本来あのような見た目なわけではなく、実際には髪の毛も眉毛もちゃんとあります。なぜこういう見た目にしたのかというのは論理的な理由があるわけではなくて、頭の中にあるイメージで、そうしたらすごくインパクトがあるだろうなと勘で思ったんです。

眉毛がないのは肉体的に問題があったというシンプルな理由です。そして、彼が島から出たときにまわりの子どもたちにすごくいじめられたので、戻った時には悪役に生まれ変わっていたんです。彼が帰ってきたときに話している言葉は、インドの聖なる書物に書かれている言葉です。ただ、彼は聖なる書物を自分の都合のいいように解釈していて、結果的にはあのように悪魔のような人間になっているということです。

 

Q:歌のシーンは実際に俳優本人が歌っているのでしょうか。

 

監督:最近のインドの俳優さんというのは、一切、歌は歌わないんです。どうやって撮影するかというと、プロの歌手の方がスタジオに来て歌を収録し、それを撮影するときに再生。それに合わせて撮影を行います。たしかに昔の俳優さんですと、歌がお上手な方も何名かいらして、自分自身で歌を歌う方もいらっしゃったんですが、最近の方はあまり歌が得意ではないということです。

 

Q:この映画の中のヒーローは筋肉を誇示している点がインド映画では珍しいと思うのですが、ほかのインド映画にもこのようなヒーローはいるのでしょうか。

 

監督:最近は俳優さんもものすごくいい体をしているので、機会があれば見せびらかそうとしているんですね。実際に見せびらかすと、観客のインドの女の子などはすごく喜びますし、観客の90%くらいは喜ぶと思います。今回は車で引きずられたりなどして服がびりびりになってしまったからという形で見えていると思いますが、ちょっと風が吹いただけでシャツが飛んだり、それを見てお客さんは拍手をしてスクリーンにお金を投げたり、と喜ばれます。たしかに前作の俳優は絶対に脱がないと思いますが、それは単に時代的な背景だと思います。

最近の映画というのは、できるだけ映画を成功させるために、ストーリーで感動を生もうというのではなくて、ビジュアル的にも、何でもチャレンジして成功させようとするところがあるんです。毎週インドでは4作品くらい上映が始まってしまうので、競争が激しいですし、チャンスがあれば俳優さんもちょっと体を見せるんです。そして今回は、最後のところでカーンチャーがものすごく巨大になっているので、それに対抗するために、せっかくの機会なのでヴィジャイのいい体を見せています。カーンチャーもと思ったのですが、ちょっとおなかが微妙だったので、腕だけにしておきました。
 
火の道

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