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2012.11.01
[インタビュー]
公式インタビュー WORLD CINEMA 『ストラッター』

カート・ヴォス(監督/脚本/製作/撮影)、サラ・アシュレー(女優)(『ストラッター』)
ストラッター

©2012 TIFF

 
 1960~70年代を思わせるロックナンバーが心地よく響き、モノクロの映像が郷愁を誘う。30年来のコンビを組むカート・ヴォス、アリソン・アンダース両監督の『ストラッター』はノスタルジックな雰囲気をたたえながらも、現代に生きるロッカーたちの苦悩と再生を浮き上がらせる。随所に両監督の“お気に入り”がちりばめられたロードムービーともいえるが、ヴォス監督は「ドキュメンタリーでもあるんだ」と意味深に笑う。同席した新人女優サラ・アシュレーも納得の表情。その真意を探ってみると…。

 
――アンダース監督が来日できず、残念ですね。
 
カート・ヴォス監督(以下、ヴォス監督):当然、うらやましがっているはずさ。直前まで来るつもりで飛行機のチケットも買っていたのに、テレビの仕事が入ってしまったんだ。背に腹は変えられないからね。
 
――ふたりはどういう役割分担で製作を進めているのですか?
 
ヴォス監督:お互いがシンクロしているというかテレパシーみたいなものもあって、なんとなく流れに沿って撮っている感じかな。あえて言えば、僕がカメラマンを務めているので、技術面に一番力を注いでいる。逆に彼女は、とても人を安心させる雰囲気があるので、役者の持っているものを完全に出させることができるのかもしれない。
 
――役者にとって、監督がふたりいる撮影現場は?
 
サラ・アシュレー(以下、アシュレー):長編映画への出演自体が初めてだったので、ふたりの監督というものに対する違和感はあまりなかったんですね。ふたりがいるなかで、とても心地良い感じで仕事をさせていただきました。キャストは気心の合いそうな方の監督にいろいろと指示を出してもらっている感じで、うまく撮れていったと思います。
 
――では、アシュレーさんはどちらの監督に指示を仰いだのでしょう?
 
アシュレー:それはもちろん、カートよ。
ストラッター

©2012 TIFF

 
ヴォス監督:それは正しい答えだ(笑)。
ストラッター

©2012 TIFF

 
――モノクロ映像へのこだわりは?
 
ヴォス監督:彼女と最初に組んだ作品がモノクロだったんだ。お互いモノクロが好きなんだけれど、それ以降はプロデューサーがモノクロをあまり好まなくてね。お金はプロデューサーから出るものだから、なかなか思うようにいかなかったけれど、この作品に関しては我々がプロデューサーなので、そういう意味ではようやくやりたいようにできたんだ。まあ、今後はどうなっていくかは分からないけれどね。
 
――ノスタルジックな雰囲気と現代のリアリズムがうまく溶け合っていた印象があるが。
 
ヴォス監督:もしかしたら僕たちの年齢が反映されているのかもしれない。ただ、主人公のブレット(フラナリー・ランスフォード)のバンドは彼のバンドで、実際に60年代のサイケやレトロな音楽を本当に演奏しているんだ。それをそのまんまやっているから、ある意味ドキュメンタリーみたいなもの。登場する車などの小道具は、自分たちの好みをそのまま出してしまったけれど(笑)。ドキュメンタリーなのか、映画なのか、というところはあるかもしれない。
 
――その中でアシュレーさんが演じたテッサは、「男にふられたことがない」と言い放つプライドの高い女性。自身と共通する部分は?
 
アシュレー:いわゆるバンドとつるむような感じの、すごく気楽な感じの女の子というイメージで役に入っていったのかな。完璧に私のキャラね(笑)。
 
――カメラマンとして心がけたことは?
 
ヴォス監督:特にはない。自分の描きたいものをベストを尽くして撮るという感じ。逆に、低予算でやらなければいけないという制限があったなかで、チャレンジしていろんなことをやっていくというのが面白かった。
 
――東京国際映画祭に出品されたことに対する感慨は?
 
ヴォス監督:本当に光栄なこと。自分のキャリアのなかでも、とても光が差した一瞬かなと思う。こういう機会にはなかなか恵まれるものではないし、とても素晴らしい経験をさせてもらっている。
 
アシュレー:私はまだ22歳で、若い時にこういう形で日本に来られたことはもちろん光栄だし、これから先の人生が良くなることしかないのかな。悪くはならないだろうと思っています。渋谷には行ったし、新宿にも行くつもり。行きたい所をいろいろと書き出したけれど、残念ながら時間がなくて…。(滞在が)2週間あれば良かったのに。
 
――日本の観客には何を感じてもらいたいか?
 
ヴォス監督:この映画は、ロックミュージシャンの生きている姿そのままなんだ。僕もアリソンもロックの映画を作っていく上で、偽りのものは出したくない。主人公の二日酔いのシーンはまさに具合が悪かったし、あざだらけの顔も本物ですべてリアル。そのままの事実を見せたいので、そういう意味での本物だという部分を見て理解してもらいたいし、主人公たちのいろんな感情も理解してもらえればうれしいかな。
 
聞き手:鈴木 元(映画ジャーナリスト)

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