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2012.11.01
[インタビュー]
公式インタビュー コンペティション 『メイジーの知ったこと』

スコット・マクギー監督、デヴィッド・シーゲル監督(『メイジーの知ったこと』)
メイジーの知ったこと

©2012 TIFF

 
高校時代に日本への留学経験があり学者志望だったスコット・マクギー監督と、画家を目指していたデヴィッド・シーゲル監督。映画を専門的に学んでいないふたりは23年前に出会い、短編を製作したのがきっかけで共同監督としての道を歩み実績を築いてきた。駆け出しのころに影響を受けたのは、なんと日本映画だという。100年以上前の小説を現代のニューヨークに置き換えた脚本にひかれた『メイジーが知ったこと』では、親権争いの渦中にいる少女がけなげに、そして力強く生きていく姿をみずみずしいタッチで描いた。成功に導いたのは、ひとりの天才少女の存在だった。
 
――共同で監督をする利点はどこにあるのか?
 
デヴィッド・シーゲル監督(以下、シーゲル監督):全部、スコットのせいにできるから(笑)。まあ、それは冗談として、映画は役者がいなければできないし、いろいろなクリエイティブなチームができなければいけない協力態勢を基にしたメディアだから、人によっては監督を分けるのはものすごく大変だろうと言うけれど、僕らにとっては非常に自然なことだったんだよ。
メイジーの知ったこと

©2012 TIFF

 
――1897年に出版されたヘンリー・ジェイムズの小説のどこにひかれたのか?
 
シーゲル監督:プロジェクトに参加した時点では小説はまだ読んでいなくて、脚本だけを読んだ。大人向けの映画だけれども、子どもの視点から描くというところが面白いと思った。
 
スコット・マクギー監督(以下、マクギー監督):小説や脚本を読み込んでいくにつれ、持続性というものに非常に関心を持った。人間関係は小説が基になっているけれど、全く違う時代に、違う感性で書かれているのに、それが持続して現代にも通じるものがあると感じたんだ。
メイジーの知ったこと

©2012 TIFF

 
――何といってもメイジー役のオナタ・アブリールが出色。彼女を抜擢した経緯は?
 
シーゲル監督:キャスティング・ディレクターが彼女に会ってセリフを読んでもらったら、僕たちのところに「すぐに来て。特別な女の子が見つかった」という連絡が入った。駆けつけて彼女と少し話をしてセリフを読んでもらったとき、「メイジーが見つかった」と思いましたね。それまでに何人も会っていたけれど、ものすごく素晴らしい。カメラの前で自然でいられる特別な才能のある子どもだったんだ。僕たちが役者のどこを見て、何を求めているかといえば、カメラを通して役者が考えているプロセスが見えるような能力。そういうプロセスが非常に伝わってきて、彼女は当時6歳だったけれど、既にできていたんだよ。
 
マクギー監督:普通はメイジー役の女子を見つけてから映画にコミットするけれど、この映画を作り始めた時点ではまだ決まっていなかった。僕たちは、いい子役がいなければこの映画は失敗すると分かっていたから、非常にリスクが大きいクレイジーなことだとは思っていた。
 
――では、彼女との出会いでいけるという手応えをつかんだのですね?
 
シーゲル監督:いや、そんなに早くはないよ(笑)。
 
マクギー監督:彼女と出会って、成功するチャンスがあるなと思ったくらい。
 
シーゲル監督:今でも(成功したかは)分からないけれどね(笑)。
メイジーの知ったこと

©2012 TIFF

 
――おふたりが監督・脚本の『ハーフ・デイズ』(08)が、日本では今夏に公開されたばかり。そして、東京国際映画祭への出品と日本での上映が続いています。
 
シーゲル監督:もう、日本に移住したほうがいいかもね(笑)。まあ、偶然だけれど、非常にうれしいことです。たまたま来日するチャンスに近いタイミングでリリースされて良かった。
 
マクギー監督:公開されていないのは知っていたので、がっかりしていたんだ。それが公開されて、非常にうれしく思っている。
 
――とても日本への興味があるようだが?
 
シーゲル監督:ふたりとも日本文化にとても興味がある。僕たちが映画を作り始めたころに、とてもたくさんの日本映画を見ていたんだ。スコットは、実はバークレーで日本の映画史を勉強している。僕たちのデビュー作(94年“Suture”)は、勅使河原監督の『他人の顔』(66)に影響を受けているんだよ。
 
――今後の監督としてのビジョンは?
 
マクギー監督:ゴールとして一度、大きなキャンバスで映画を作ってみたいと。今まではインディ映画を作っていたので、大きい映画を作ってみたいねと、いつもふたりで話し合っているんだ。
 
鈴木 元(映画ジャーナリスト)

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