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2012.11.08
[イベントレポート]
「(見た人が)「ああ夕張に行ってみたいな」と思う映画を撮りたかった」――10/25(木)アジアの風『スイートハート・チョコレート』:Q&A

10/25(木)アジアの風『スイートハート・チョコレート』の上映後、篠原哲雄監督とミッシェル・ミーさん(プロデューサー/脚本)によるQ&Aが行われました。
スイートハート・チョコレート

©2012 TIFF

 
篠原哲雄監督(以下:篠原監督):TIFFには、審査委員ので参加を含めて3度目です。見ていただいてありがとうございます。
 
ミッシェル・ミーさん(以下:ミッシェル):皆さんこんばんは。上海から来ました。今回は本当にありがとうございます。
 
司会:この作品の製作の経緯は?
 
ミシェル:ある人、ある場所を好きになることで縁が結ばれるということがありますが、私の場合は、それが映画と関係がありました。
2006年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に行ったのですが、その時の印象が深く、とてもいい思い出を持っていたのですが、2007年にその映画祭が中止になってしまったということをきいて、それがとても残念で、なにができるかを考えた時、映画を製作することしかないと思いました。

(※ゆうばり国際ファンタスティック映画祭は2008年に復活。2013年は2/21(木)より開催されます。)

『幸せの黄色いハンカチ』のような映画を撮って、「ああ夕張に行ってみたいな」と思ってもらいたかったということがきっかけです。
それから4年かかりまして、この作品が出来ました。ありがとうございました。
 
司会:篠原監督の起用について
 
ミシェル:脚本を書いた時、これは外国の人に夕張を知ってもらうための映画ですので、日本のことをよくわかっていて、日本の風俗とか日本の文化をわかっている監督に撮ってもらいたいと思ったのが1つと、それから私自身が篠原監督の作品を全部見ていて、大好きでしたので、お願いしました。
スイートハート・チョコレート

©2012 TIFF

 
司会:篠原監督、オファーがあった時は?
 
篠原監督:おお、ついに外国映画をやることになったかと(笑)。
僕も夕張が好きでしたし、何度か夕張に行ってますし、本格的にはやってないですけれども、基本的にはラブストーリーが好きですので、ぜひやろうと。
この作品は心臓移植というのが裏のテーマに流れております。心臓移植という題材に関して、このテーマをストーリーに組み込んで良しとするという、そのように考えてくれる監督があなただったんだ、とミシェルに言ってくれたんです。
僕はこれは心臓移植が1つのフックになって展開していくストーリーだから当然、そうであるべきだと思って答えただけなんですけれども、そこはある意味リアリティとは別のある種のフィクションという捉え方を監督がするかということで、僕はそういことは受け入れられる、そういうタイプの監督だったもんですから、このお話しがきたのだなと思っています。
 
司会:ロケはいかがでしたか?
 
篠原監督:この作品は冬に夕張で撮るということが命題、雪のある季節に撮らなきゃいけないということで本当は1月か2月に撮りたかったのですが、色々ありまして3月になってしまいました。ロケハンで最終的に確認した時には、雪がなかったにも関わらず、3/15からリン・チーリンが雪山で絵を描いている場面から撮影を始めたのですが、この時に雪が降ってくれまして、さらに吹雪になりまして、これはツイてる、僕たちのために雪が降ってくれた思いました。夕張の人たちは、なんで3月に雪が降ってるんだとかなり迷惑がっていましたが(笑)。その夕張で2週間撮りまして、その後上海に、(通訳さんに、”ちょっと早口すぎますか?ごめんなさいね”笑)、で4月になって上海で約1ヵ月間撮ったという感じです。
 
Q :劇中の日本語と中国語のバランスや会話のリズムは重視しましたか?
 
ミシェル:10年前、木場(役名・演:池内博之)が日本にいた時は日本語を話します。10年後の上海では中国語が出来るという設定で中国語を話します。
愛を告白するシーンは、まず日本語で書いて、中国語にしました。池内さんには中国語でも演じてもらいましたが、心情を吐露する場面、心からの溢れる気持ちを表現するときには、やはり日本語での演技の方が感情が良く出ていたので、結果的には日本語でしゃべっている方を採用しました。
 
篠原監督:夕張から撮影を開始して、リン・チーリンさんと池内博之さんと福地祐介さんが3人とも日本語でしゃべっていました。僕は日本語で演出しないとわからないので、チーリンさんもある程度日本語ができるので、基本的に日本語で撮っていました。
中国語のところは、助監督とニュアンスを確認しながら撮影しました。
ミシェルさんとしては、池内さんの役は10年も中国にいるのだから、中国語を話すべきだ、と言ってきましたが、ほとんどを日本語で撮っていたのでそんなの今さら無理だよ、という議論も少しありました。その後、池内さんががんばって中国語を覚えてくれたので、アテレコで全部録り直したのですが、日本語の感情を伝えるシーンは日本語でしゃべるべきだと思っていました。中国語での池内さんの会話の録音中も録音技師の方と、日本語が採用されるよな、と言いながら作業していたのですが(笑)、結果的にミシェルさんとも意見が一致して、先ほど彼女が言ったように良い方を採用したという形になりました。
 
司会:まさに合作映画ならではですね。
 
Q :なぜヒロインは手術をしたのか、いつ受けたのですか?
 
ミシェル:もともと長い脚本で、手術のシーンもあったのですが、完成した作品のなかでは、手術のシーンは欠落していました。それには2つ理由がありまして、1つは、夕張で手術のシーンに適した病院が見つからなかったこと、もう1つはあまり手術のところを強調しない、という監督の配慮もありました。
最終的に追加撮影しようかとも思っていたのですが、様々な理由が重なって、そのシーンの撮影は行いませんでした。
 
篠原監督:心臓移植のシーンで夕張にいい病院がなかったとミシェルがいいましたが、日本の監督の立場から言いますと、病院がなかったから撮らないというのは大きなミステイクになってしまうのでお伝えしたいのですが、病院がなかったから撮らなかったわけではなくて、最終的に監督の僕、日本の監督である僕に任せてくれる部分がありました。日本側の脚本家とクランクインの2週間前くらいから最終形にまとめる作業があったのですが、そこで、ヒロインが病気であるという事は、手術のシーンを入れなくても描けるのでは、という判断の元で撮りませんでした。
傷などを使ってあらわしていたのですが、今そのような質問をいただくということはちょっと弱かったのかなと、思います。
でもその手術のシーンを過剰に描く必要はないのかなと思ってやめたというのがあるんですね、あともう1点はヒロインに誰の心臓が移植されたということが伝わっていないかもしれません。
日本ではその後のセリフでニュアンス的に誰の心臓が移植されたかが伝わるのですが、中国の観客には伝わらないのではということから、ミシェルさんとしては、その手術シーンが必要ではと考えられたと思います。ですので先ほどの発言をされたと思うのですが、僕としては抽象的ではありますが、現在完成した作品の場面を選択したということですので、お伝えしておきます。
 
Q:これから美味しいチョコレートを買って帰ろうと思います。リン・チーリンさんからは女性ならではのアイデアの提案はありましたか?
 
篠原監督:いっぱいあるんですが、今、答えようと思ったことを忘れちゃいました(笑)。
ベランダでつぶやく言葉とか、主人公に対する気持ちを私なりにこう伝えたいということが結構ありましたね。
指輪を見つけるシーンがあるのですが、僕は指輪というものに強い意識がない人間なものですから(笑)、最初は淡泊で軽い演出でした。でも彼女は指輪を見つけた時にショッキングでありたいと思って、指輪がこういう動きをして、それをこんな風に発見するのはどうでしょう?という提案がありまして、ああなるほどな、と思って採用しました。そういう随所でディティールについて言ってくれたところがありました。
チョコレート作りに励んでいるシーンにも熱心に取り組んでくれました。そのおかげもあり、チョコレートを食べたくなる映画になったので、ぜひ、帰りにはチョコレートを買って帰ってください。
スイートハート・チョコレート

©2012 TIFF

 
司会:主演の池内さんの中国での人気は『イップマン』などの影響でしょうか?
 
ミシェル:そうですね。よく知られています。
今回の映画の役にも、彼はピッタリだと思うので、この映画によってまた新たなファンを獲得してくれると思います。
 
Q:札幌から来ました。北海道を美しく撮ってくれてありがとうございます。
夕張の居酒屋のシーンで出てくるじゃがいもに塩辛をのせているお通しは中国の観客にも伝わるのでしょうか?また、アジアでの公開は決まっていますか?

 
ミシェル:この映画ができるまでの3、4年で10数回夕張に行きました。この映画を見た人に夕張の、そして北海道の良さを知ってもらいたいと思いました。10年という月日を描くので春夏秋冬を描くべきだと思ったのですが、一番美しい冬の北海道を、氷の中でも暖かい北海道の方々の心を描きました。この映画には上海も出てくるので、日本の皆さんは上海にも来ていただけたらなと思います。
 
篠原監督:じゃがバタに塩辛をのせるのは、北海道の方がそうやって食べているのを見ているので、それに則って撮りました。
アジアでの公開は彼女の方がやってくれると思います。でもまだ日本での公開が決まっていないのですね。それが問題です!会場に関係者の方がいらしたら、ぜひ考えていただけるとうれしいなと思います。
 
ミシェル:今回の上映は、中国と日本が力をあわせて作った映画のワールドプレミアでした。
夕張、そして映画に対する気持ちがこもっていますので、中国、日本だけでなく、アジアでの公開をしていきたいと思いますのでがんばっていきます。

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