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2012.11.14
[更新/お知らせ]
11/12(月)「日本映画・ある視点」部門作品賞受賞『GFP BUNNY タリウム少女のプログラム』特別上映会&記者会見

土屋豊監督(『GFP BUNNY タリウム少女のプログラム』※一般公開タイトル『タリウム少女の毒殺日記』)
GFP BUNNY

©2012 TIFF
依田 巽チェアマン(左)と土屋 豊監督

 
第25回東京国際映画祭での『GFP BUNNY タリウム少女のプログラム』(※一般公開タイトル『タリウム少女の毒殺日記』)の日本映画・ある視点作品賞受賞を受け、日本外国特派員協会にて上映会が開かれました。
 
<上映前、矢田部吉彦プログラミング・ディレクター挨拶>
矢田部吉彦PD:「日本映画・ある視点」部門は4年前より、日本映画のインディペンデント作品を応援する部門となりました。若いインディペンデント作家の作品をより多くの海外の方に見てもらうため、金銭的な応援としては、出品時に作品の英語字幕制作の助成として50万円、作品賞を受賞したら100万円をお渡ししています。また今回の上映会のように海外プレスの方へ作品を積極的に紹介し、この部門を足掛かりに世界各国の映画祭へ羽ばたけるよう支援していきたいと思っています。
GFP BUNNY

©2012 TIFF

 
<記者会見前、依田 巽チェアマン 挨拶>
依田 巽チェアマン:第25回東京国際映画祭は皆様のご協力によって無事、盛況のうちに終えることができました。昨年の「東京 サクラ グランプリ」受賞作『最強のふたり』も今年の劇場公開で大ヒットを記録し、「日本映画・ある視点」部門受賞作も、一昨年の『歓待』、昨年の『ももいろそらを』の例にみるように、TIFFでの受賞をきっかけにサンダンス、ロッテルダムなど多数の海外映画祭で上映されています。TIFFもインディペンデント映画を発掘・応援しようという試みをつづけていますが、今回の受賞作も非常に面白い、意表をついた素晴らしい作品であり、土屋監督の独創性に我々は驚愕させられました。こうした作品が公開され、世界に出ていくことはきわめて大事だと考えます。TIFFは来年26回目を迎えます。より多くの作品を集め、優れた作品を選び出しながらさらに飛躍していくだろうと考えます。皆様、ぜひ今後の東京国際映画祭にご期待ください。そして引き続き皆さんのご協力をお願いいたします。
GFP BUNNY

©2012 TIFF

 
上映終了後に土屋 豊監督が記者会見に臨みました。外国人プレスから寄せられる熱心な質問に答える一方で、2012年11月16日(金)に期限を迎えるクラウド・ファンディングによる配給宣伝費調達についても、改めて呼びかけを行い、理解を求めました。
GFP BUNNY

©2012 TIFF

 
Q:受賞おめでとうございます。大変エネルギッシュな作品で楽しく拝見しました。現在、クラウド・ファンディングで資金の半分ほど調達できていますが、クラウド・ファンディングに頼らなければならない状況を、監督はどう受け止めていますか?
 
土屋豊監督(以下、土屋監督):クラウド・ファンディングという新しい方法を用い、個別にカンパを募るのではなく、小額の資金を不特定多数から集めることをポジティブに考えています。ただし、これが全てではなく、たとえば200万の資金の半分はこの方法で集めて、もう半分は助成金などから調達し、さらに別の助成金を求めるなど、いろんな支援の仕組みをパズルのように組み合わせて成立させるのが、資金調達の健全なやり方ではないかと思います。
 
Q:前作『PEEP“TV”SHOW』(2003)でも、技術や科学の進歩が人間にどんな影響を与えているのかを取り扱っていました。あれから10年近い歳月が流れて、今どんな変化を感じていますか。
 
土屋監督:大きく変わったのは、やはり、インターネットの普及とSNSの発展ですね。『PEEP“TV”SHOW』の時は監視社会をテーマに描きましたが、今は自ら情報発信し、居場所や個人情報を披露して、私と友だちになって下さいとアピールする。そうやってネットワークの中に入っていく時代になりました。
 
Q:複数の科学者が登場しインタビューを受けていますが、どういった経緯で人選されたのでしょうか。
 
土屋監督:透明ガエルを作った広島大学の住田正幸先生ですが、ネットで検索するうちに見つけました。透明ガエルがとても不思議な印象で、どうしても映画に登場させたいと思って、自分からアプローチしました。
『iPS細胞』という著書もある八代嘉美さんは、専門的な研究者でありながら、広い観点から先端医療について話してくれる人を探していて、偶々知り合いに伝があり、ポップカルチャーにも造詣が深いと聞いて、お願いしました。
もうひとりは、日本ラエリアンムーブメント代表の伊藤通朗さんです。この団体は2000年代初頭にクローン・ベイビーを作ったと発表し、世界的に話題になりました。一部荒唐無稽なところもありますが、科学こそ唯一信じられる真実の基準であると主張し、その上で、これからの世界を構築しようと啓蒙活動を展開しています。僕はその思いきった主張に興味を覚えて、集会にも通い、3〜4年越しで映画の話をして出演してもらいました。
 
Q:出演した科学者たちの反応は如何でしたか?
 
土屋監督:先生方には観ていただいておりますが、残念ながら、まだ感想を伺っていません。ただし、ラエリアンムーブメントの伊藤代表からは大絶賛を受けており、団体の皆さんがこぞって観に来て下されば、大ヒットするかもしれません(笑)。
GFP BUNNY

©2012 TIFF

 
Q:少女が小学生の男の子にツバを吐きかける場面には、どんな意味があるのでしょう?
 
土屋監督:ランドセルに着いたGPS付きのお守りを壊して、少女は男の子を解放してあげます。そして、じゃれあいながら男の子を観察している。そんな場面です。 
 
Q:とても挑発的な作品で興味深く拝見しました。ショッキングなシーンもありましたが、ハムスターが殺されずにホッとしました。参考資料に、経済的に困窮し映画を諦めかけたが、2010年にあることがきっかけでまた撮る気持ちになったとあります。一体何があったのでしょう?
 
土屋監督:ふだんフリーで仕事をしていますが、リーマン・ショック以降は声がかからなくなりました。しかしまた、2010年頃から再び仕事が入ってくるようになって、借金しなくても生活できるようになりました。
 
Q:少女のモノローグに監督の声が介入する場面がいくつかあります。こうした興味深い演出はどこから着想を得たのでしょう?
 
土屋監督:最初、「NEW HELLO」という脚本を書いて、2010年の東京国際映画祭の企画マーケットに出しました。その時は、しっかりとしたドラマ性のある物語を書いたのですが、なかなか思うように資金が集まらない。そのうち、これはやりたいものと違うんじゃないかと思うようになりました。資金を集めるには、無理をしてでも、既存の映画フォーマットに則った作品を作るべきだと思い込んでいたのです。でもお金が集まらずムカムカしてるうちに、最初に映画を作ろうと思ったとき、自分はフォーマットを壊すことに興味があったと思い至りました。そこで初心に立ち戻りガチャガチャと壊し、ありえないやり方でミックスすることにしました。
 
Q:どこまでがフィクションで、どこまでが事実に基づく内容だったのでしょう。実際の少女も統合失調症だったのですか。またゲノムについても実際に日記で言及していたのですか?
 
土屋監督:メディアで語られていることを要素として取り入れていますが、それが事実かどうかはわかりません。2005年に事件を起こした少女のブログ(日記)はアーカイブになっていて、今もインターネットで読むことができます。それを読んだ印象をもとに彼女の考え方や世界観を想像し、事件当時ではなく今だったら、彼女はどんなふうに世界を見るのかと考えて、フィクションにしました。映画の中で紹介される言葉の7〜8割は、実際の日記から引用していますが、ゲノムについての言及はありません。あの部分は僕が想像して、2011年のタリウム少女に言わせた言葉です。
 
Q:実際の少女は生物学よりも化学を好み、1960年代にイギリスで継母を殺したグレアム・ヤングという少年を敬愛していたと聞きました。iPS細胞やヒトゲノムなど映画が捉えている科学的側面とは裏腹に、彼女の存在はサイコ・パスのような異質な印象を受けます。逆に、彼女に重点をおいてみた場合、登場する科学者が、マッド・サイエンティストのように見られやしないかという危惧を感じます。監督はそのあたりをどんな風にお考えになりますか?
 
土屋監督:登場して下さった科学者については、その考えや行動をカッコイイと思って描いたつもりです。今観てもカッコイイなと思えるほどで、マッドな感じに観られなければいいのですが(笑)。
僕は少女の日記を読んだとき、観察者の視点が強調されていることに興味を覚えました。愛のねじれや憎しみではなく、アリやハムスターを観察するのと等価に母親を観察している。そんな観察者が今の世の中をどう見るのか、現代社会の仕組みをどんなふうに眺めるのかを描こうとしたのです。その点、2005年のタリウム少女にインスパイアされた僕の想像力の産物であり、実際の少女の存在とは異なります。
今のデータ社会はマーケティング理論による数値的判断から導き出されていて、たとえばアマゾンでは何をクリックしたかというデータをもとに、当人へのお薦めの本を、より精度の高いかたちでセレクトしたりする。右翼であれ左翼であれ、どんな思想の持ち主でもクリック回数によって等価に扱う訳ですが、それは母親もアリも等価に観察するタリウム少女の視点と、多分に重なるところがある。そこでこの2つをミックスさせたら面白いと考えました。
 
──監督ありがとうございました。最後に一言どうぞ。
 
土屋監督:今まで一度もお金の話をしなかったので、自分でも偉いなあと思います(笑)。今週16日の深夜11時59分がクラウド・ファンディングのデッドラインとなっております。あと80万円必要です(11/14・14:00の時点ではあと40万円)。カード決済できるので、お持ちの方はギリギリまで期限がありますが、お持ちでない方は銀行振込みになってしまい、15日あたりにアクセスして、振り込んでいただくかたちになります。ほんとは今日皆さんからキャッシュで寄付を募ろうと思ったのですが、それは勘弁してくれとのことでしたので、袋を持ってきましたが今日は手ぶらで帰ります(場内笑)。短い期間ですが、ぜひその旨、広めていただければ幸いです。
GFP BUNNY

©2012 TIFF

 
motion galleryのクラウド・ファンディング
土屋豊監督最新作「GFP BUNNY」の配給宣伝費サポートの詳細は下記にて
motion-gallery.net/projects/GFP_BUNNY
*11/16(金)23:59まで受付
 
第25回TIFF 日本映画・ある視点部門作品賞受賞
GFP BUNNY─タリウム少女のプログラム─』(公開タイトル:『タリウム少女の毒殺日記』)
GFP BUNNY

©W-TV OFFICE

『タリウム少女の毒殺日記』にタイトル変更し、2013年春、渋谷アップリンクにて公開決定
監督/脚本/編集:
土屋 豊
 
キャスト:
倉持由香
渡辺真起子
古舘寛治
Takahashi

 
公式サイト:gfp-bunny.info
Facebook:www.facebook.com/GFPBUNNY

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第24回 東京国際映画祭(2011年度)